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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第81話 俺たちの未来は修羅の道


 岡部は説明を続けた。

「たとえば、ゴリラに裏切りは少なく、ニホンザルには多い。ゴリラは家族単位で動き、その関係性にはルールより情が働く。それに対してニホンザルは群れ単位で動き、強い者が食料、生殖、なんでも総取りというルールだ。だから、弱いものは裏切らないと絶対に生きていけない。だから、ニホンザルにはゴリラにはない愛想笑いの機能がある」

「……現代社会みたいだな。ちょっと、いや、かなり悲しいぞ」

 思わず僕、そう声をあげてしまう。


「ああ、ヒトの社会は、特に現代においてゴリラの世界からサルの世界に移行しているらしい。俺たちだって進学して卒業して、そしたら今の情が効く学校という社会から、効率という名のもとに弱肉強食の原理で動く会社という社会で働かねばならない。

 個人としての俺たちは、逃げ場のない修羅の道に向けて歩んでいるんだ」

 ……おい、岡部。

 僕たち、ここから脱出できても、幸せにはなれないってことか?

 ここで生き延びようって気が削がれるなぁ。もう止めてくれよ。

 まぁ、鴻巣あたりなら、政治家にでもなってそういうの変えてくれるかもしれないけどな。


 僕たちの暗澹(あんたん)となった表情を見た岡部は、口調を明るく変える。

「まぁ、今は蒼貂熊(アオクズリ)の話だったな。

 地球で進化した生物ではない蒼貂熊は、サル類とは別のことも考えなきゃならない。俺は鴻巣の蒼貂熊には情がないという観察は正しいと思う。知能はあるのに、情はない。となると、これって話は簡単だ。蒼貂熊という生物の土台には、きわめて単純なルールしかないんだよ」

「えっ、どういうこと?

『強い者が取る』ってニホンザルのルールより、簡単なルールはないんじゃないの?」

 これは僕だけじゃない。岡部の話を聞いていたみんなが等しく感じた疑問だろう。愛とか情の方がルールとしては遥かに複雑だし、平等性を欠いているからわけのわからないことになるんじゃないか。


「ごめん、言葉が足らなかった。そういう意味じゃない。

 生物には生存本能があって、まぁ、それがなにかというのは別の議論だからしないけど、そこには『食う』と『えっち』というルールがセットで組み込まれている。その2つこそが、地球にいるすべての生き物の土台だと言える。それに対して、造られた生命である蒼貂熊は、その土台を作るルールが俺たちとは違うんじゃないか?」

「蒼貂熊もけっこうたくさん子作りしているし、吐いてまで食うぞ」

 当然のように、吹上が反論した。その手はお下品なえっちなサインを示している。相変わらず、どこまでマジなのかがよくわからないヤツだ。


「そう、そこなんだよ。だけど、吐いてまで喰い続ける生物は、古代ローマの金持ちぐらいだ。アナコンダって蛇もそうだって話はあるけど、調べた範囲では裏が取れなかった」

「どういうことだよ?」

 岡部の話の先が見えない。だけど、これは僕だけじゃないみたいだ。みんな、目で岡部に先を促している。


 岡部は言う。

「生物は、喰わないと死ぬ。

 だから俺たちには、飢えの恐怖と焦燥、それとセットで食うという行動自体とその結果の満腹に快感を感じる機能が組み込まれている。間違いなく、その2つを感じる生物の方が生き延びるのには有利だったんだ。適者生存ってヤツで、だな。

 それに対して蒼貂熊は、食うというプログラムは仕込まれているけど、それだけなんじゃないのか?

 飢えはとことん避けるようにプログラムされていても、食った結果の満腹の快感はプログラムされてないんだ。古代ローマの金持ちも同じだな。食べ続けるために、満腹の快感というプログラムを自ら放棄した。まったくもう、不合理極まりない」

 なるほど、生物部からはローマ時代の贅沢はそう見えているのか。

第82話 人造生命、蒼貂熊

に続きます。

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