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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第80話 寝返りの機能


 そこで、化学部の細野が口を開いた。 

「で、俺、思うんだけど、そういう偵察目的の造られた生物ならば、観察結果の考察に思い込みによる誤差を生じさせないために、蒼貂熊の主観は真っ白な状態のまま送り込まれて来ているってことになるよな。これって、上手くするとこっちに寝返りをさせられるってことにならないか?

 ほら、真っ白ってことは、洗脳の余地があるってことだからさ」

 その思いつきを、生物部の岡部が粉砕した。


「それは無理だ。

 理由は簡単だ。蒼貂熊が造られた生命体なら、創造主(クリエイター)は寝返りできるような機能を最初から付けない」

 岡部の断定に、今度は物理部の行田が聞き返す。


「ちょっと待て。裏切りを可能にする機能ってのはなんなんだ?」

 と。

 その質問に対し、すぱんと思うことを口にしたのは鴻巣だ。

「好悪の情とか損得勘定とかプライドとかいろいろ挙げられるけど、結局のところは情と状況の天秤だろ。あとは天秤を可能にする知能」

 鴻巣はベルトで縛られたままなのに、さっきまでの絶望感みたいなものはない。むしろ、その口は前より闊達(かったつ)になったようだ。


「金絡みでも三角関係でもパワハラでも、人間関係のいざこざは結局そこから生まれるもんだろ。そもそも、裏切りを必要とするような状況がなければ、話は始まらない。そして、その状況に追い込まれたら、あとはその個人の情の多い少ないで裏切るかどうかは決まる。つまり、損得勘定 vs 個人の情ってことだからな。

 そこから当て嵌めると、蒼貂熊には知能のポテンシャルはあるんだろうけど、それだけで話は終わっている気がする。つまり、状況は見えていても情はない。多い少ないじゃなくて、存在しないんだ。だって、2頭でバディみたいに行動しているけど、片方が殺されたからって残された方は執念深く仇討ちって感じでもない」

 そこで鴻巣はいったん口をつぐんだ。

 その理由を敏感に察した軽音部の上尾が、割りと乱暴に鴻巣の口にペットボトルの飲み口を突っ込む。中身はトイレの手洗いから汲んできた水道水だ。とうに元の中身は飲み尽くしている。


 喉を鳴らしてペットボトルを空けると、鴻巣は再び話し始めた。

「覚えているだろ。蒼貂熊の最初のペアのことだ。蔵野のダンクで仕留められたヤツのバディの1頭だけど、負傷したまま単独で攻めてきた。で、他のペアがそれを見ていて手助けはしなかった。これって、獲物に対する縄張り意識だとされていたけど、それだけじゃない。アイツら、情がないんだ。加えて好悪も損得勘定もない。自分の思い描いた、あるべき現実に近づけようって感じすらもないんだ。狩りが上手いってのは、因果関係が理解できているからで、つまりそれだけの知能はあるってのに、抜けている機能があるんだ。

 だから、プライドってか、自意識もさほど感じてないし、ただただ淡々と空腹によって起動されるプログラムに沿って襲ってくるんだ。

 蒼貂熊は、裏切りとかとは別の次元にいる生き物だと思う」

 まぁ、確かにそれは鴻巣の言うとおりなんだろうな。


「鴻巣の言う『情と状況の天秤』は、『関係性のルール』とも言える。そう整理した方が理解しやすい」

 そう鴻巣の言葉を引き取って言ったのは岡部だ。というか、この疑問、本来質問されていたのは岡部だったんだよな?


「実はこの問題、結構研究済みなんだよ。で、動物の観察から、興味深い結果が出ている。人造生物だからという理由じゃないと思うんだよ」

 おお、もう結論はでている問題だったのか?


第81話 俺たちの未来は修羅の道

に続きます。

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