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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第78話 MAD


 鴻巣は、井野の説明を聞いて、なお反論を続けた。

「わかったような、わからないような、だな。

 蒼貂熊(アオクズリ)に核技術を隠している傍証はわかったとしても、そもそも日本政府が蒼貂熊の情報を出さず、こちらの兵器の情報も蒼貂熊に渡さずってのは、核と関連してどういう意味があるんだ?」

 まぁ、たしかに井野は、ここの説明を積み残している。だけど、井野は動じなかった。


「簡単なことだ。鴻巣、お前だってわかっているだろ?

 まず大前提として、異世界とは核の相互確証破壊(MAD)が成立しないんだよ。本来核兵器ってのは、自他ともに取り返しがつかない破壊を同時に起こしてしまうから威嚇にしか使えないものだ。これが核兵器に対する人類のスタンスだろ。

 だけど、異世界の敵も核技術は持っているとしたら、敵は容赦なく核を使用するだろう。なんと言ったって、ここは敵からしたら異世界で、核を使用したとしても報復の不安はないんだ。異世界との通路を閉じてしまえばこちらからは攻撃できないんだからな。まぁ、逆を言えば、こちらも敵の隙をついて核による徹底した先制攻撃を仕掛けることも不可能じゃない。つまり、同じことができるってことになるんだが……」

 ……なるほどって思うけど、同時に核って怖いとしか言いようがない絶対性があるなぁ。それこそ怖いから、できるだけ触らずにいたい話だ。


 だけど、井野の話は止まらない。

「だから、敵に核を使わせないためには、こちらが核を持っていないと隠し通すこととともに、偵察の蒼貂熊の被害を敵の想定内に抑えることが必要となる。いきなりこちらがエスカレートして、蒼貂熊の皆殺しなんかしちまったら、戦争の局面(フェーズ)が次の段階に移行してしまうんだよ」

 ……僕も鴻巣も、いろいろと考え、疑ってきた。でも、井野はさらに深く考えていたんだな。きっと、今日という日に蒼貂熊が来てから考えたことじゃない。前々からこつこつと考えていたんだろう。


 だけど、これにも鴻巣は反論した。

「そうは言うけど、こっちの核を隠しておく方がリスクが高まることだってあるはずだ。相手が丸腰ってことになれば、やり放題って考えるのが普通だろ?

 異世界の敵が、いきなりこっちに対して核を使う可能性だってあるんだし」

 鴻巣の指摘は鋭い。みんな、固唾を呑んで井野の再反論を待った。


「鴻巣の言う可能性はないんだ。

 もしも、異世界の敵がいきなり核兵器でこっちを殲滅するなんて考えていたのなら、蒼貂熊を送り込むなんてコストは掛ける必要はまったくない。

 戦争ってのは経済でもある。放射能物質で汚染され、生産性を喪失した焼け野原より、プランテーション農場や奴隷が手に入る方がいいに決まっている。そのための蒼貂熊なのさ」

 これでついに鴻巣は黙り込んだ。反論をすべて封じられたのだろう。


 そして同時に、蒼貂熊に怯えながらの奴隷生活ってのが、頭の中に浮かんでいたのは僕だけじゃないはずだ。一歩間違えれば鞭打たれるどころか喰われる支配って、きっと正気ではいられない日々になる。冗談じゃない。

第79話 Y0uTuber逮捕の事情

に続きます。

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