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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第49話 人類の強み2


 男子生徒のベルトはすぐに集まった。

 その中から細すぎないものを選び、解けないように結び合わせた。

 ここでも家庭科部の北本が大活躍した。


「ベルトの金具は案外弱いの。特に、衝撃が加わるとなると、金具と革の接合は弱くてまったくあてにならない。だから、ベルトの素材同士を結び合わせて」

 ……そんなこと、男子生徒の誰も考えたことはなかった。僕は金具を介してつなぎ合わせれば簡単だと思っていたから、その甘さには反省するしかなかった。


「気休めにしかならないが、提案だ。教壇を突き出す窓は、下で蒼貂熊(アオクズリ)が死んでいる位置にしろ。筋肉は物理的ショックを吸収する効果がとても高い。蒼貂熊の筋肉であっても、きっと、だ。だから、ベルトが切れて落ちても、アスファルト舗装の上に落ちるよりは生命が助かる確率ははるかに高くなる」

 物理部の行田の言うこと、これも誰もまったく気がつかなかった。北本や行田のこういった修正はとてもありがたい。こういう集団の知が人間の強みなんだって、あらためて思うよ。


 まぁ……。

 墜落死が蒼貂熊に喰われて死ぬという過程の違いしか生じないかもしれないけどな。でも、生きのびる確率は少しでも高めるべきだよな。


「あと、ベルトに印をつけておけ。落ちた上原は、弧を描いて校舎の外壁に叩きつけられる。その時、2階の窓ガラスに突っ込んじゃわないよう、長さをチェックしておくんだ」

 そうさらに付け加えたのは化学部の細野。

 そのリスクもわかる。考慮しておかないといけないポイントだよな。


 準備は着々と進み、上原の顔色はその進行に合わせるように緊張で蒼白になっていった。

「並榎先輩。お守りに先輩の弓を貸してもらえますか?」

「僕のは強いぞ。引けるのか?」

「甲矢の1回だけですから、なんとしてでも引きます。どうせ、乙矢までは射てません」

「じゃあ、持っていけ。射たら、その弓は捨てろ。両手が空いていないと助かるものも助からない。間違っても、俺の弓のために生命を落としたりするなよ」

「わかりました」

 上原はそう応えてうなずき、自分の乙矢を僕に渡した。僕はその託された矢を握りしめる。これは上原が戻ってきたら返すんだ。形見になぞさせない。


 1年生たちが、ドライバーでアルミサッシの窓を取り外した。そして、可能な限り素早く教壇を突き出し、窓枠を支点にして何人もの体重でバランスを取って支える。

 屋上の蒼貂熊からは見えないよう、結び合わせた上原の命綱のベルトは教壇の下側を通している。だから、上原はクッションとなるタオルを介して右足に結ばれたベルトを自分の身体で隠して歩き、蒼貂熊に見せないようにしないといけない。命綱は胴体に結ぶという案も出たんだけど……。落下の衝撃で内蔵を傷めたりしたら取り返しがつかない。でも、足だけなら脱臼しても骨折しても死にはしないんじゃないか、と。


「……行きます」

「行ってきます、だ」

 僕はそう上原の言葉を訂正し、上原は白く血の気の引いた顔のままうなずいて、案外素早く教壇の上によじ登った。そして深呼吸を1つして、そのまま教壇の上を歩いた。と言ってもわずかに5歩なんだけど。


 弓の弦に矢をつがえ、打ち起こしの体勢に入る。

 廊下にいる僕たちに、屋上にいるはずの蒼貂熊は見えない。だけど、その咆哮は聞こえ……、って、これ、下からだ。

 来客玄関の階段の下に、もう1頭の蒼貂熊がいつの間にか姿を現していて、上原に向けて吠えたんだ。これは単純に計算違いだ。保健室の篭原先生からこの蒼貂熊を引き剥がしたかっただけなのに、この挟撃では僕たちが襲われかねない。

 だけどもう、どうこう考えている時間はなかった。

第50話 一難去ってまた一難

に続きます。

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