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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第45話 2乗3乗の法則


「ないとある、それぞれ説明しろ」

 なんだ、偉そうだな、鴻巣。怪我人相手に。

「ないってのは、僕たちに蒼貂熊(アオクズリ)を倒すための武器の類がほぼないってことだ。矢は残り5本。吹き矢の矢も釘の残りが少ない。砲丸に至っては終わってしまった。蒼貂熊の死体から回収できればいいんだが……。まぁ、回収して射ても、もう(あた)るとは思えないけどな。

 とにかく、僕たちには気休めにもならない程度の装備しかないんだよ。屋上では電気トラップも無理だし、かといって肉弾戦に持ち込む愚は間違っても冒せない。

 つまり、こちらから屋上への攻め手は皆無だ」

「じゃあ、そんな中で、なにが『ある』んだ?」

 そう問う鴻巣の顔は、軽い苛立ちと興味を示していた。


「囮と高度差だ」

 僕の答えは簡潔で、だけどそれだけで鴻巣だけでなく、宮原と岡部の両方に僕の考えは伝わった。

「誰かが屋上から命綱を付けて飛び降りるんだな?

 蒼貂熊を散々煽った挙げ句に?」

「ああ。基本ラインはそうだ」

 岡部の答えに、僕はうなずく。


「さっきのことを考えれば、蒼貂熊は屋上からの落下に耐えられないんじゃないかと思うんだ」

 僕の答えに、鴻巣が疑問を呈する。

「そうは言うが、さっきの蒼貂熊は手負いだった。だけど、そもそも蒼貂熊の跳躍力は結構なもんだぞ。跳躍力があるってことは、相当な高さからでも着地もできるんじゃないのか?」

「いや、物理として無理だ」

 今度は僕に代わって物理部の行田が断言した。


「2乗3乗の法則ってのがあってな。身体のサイズに対して強度、つまり太さ、断面積は2乗で増していく。だけど、体重は3乗で増していくから、強度限界がくる。象なんか、1mの段差を落ちたら骨折して終わりとなにかで読んだぞ。

 そもそも蒼貂熊は5m、1トンの化け物だ。あの下半身の筋肉量で跳躍力があって、8mくらい跳ぶと言われていたな。だけど、ここで観察していると、階1つ分が精一杯、相当頑張っても5mくらいなもんだ。それでも体重を考えれば凄いんだが。

 おそらくは、こういうことだろう。蒼貂熊の子供とか若い個体なら体重が軽い分、8mくらい跳ぶんじゃないか?

 だから、農地にフェンスを作る計画が持ち上がったとき、その高さは余裕の1.5を掛けて12mだったんだろうな。で、屋上の高さも12mくらいはあるだろうから、成体の蒼貂熊がその体重を殺して無事に着地するなんてできようはずがない」

 そうか、なるほど。


 鴻巣はさらに聞く。

「……それはわかった。だけど、現に俺たち、2mは跳べないけど2mを飛び降りるのはできるぞ?

 飛び降りる方は案外大丈夫なんじゃ?」

 今度は生物部の岡部が答えた。

「体重1トン超えで、それができる生き物はいない。身体能力が高い肉食獣は狩りで跳躍できる高さ以上を飛び降りるけど、ネコ科最大のトラでもせいぜい350kgしかないんだ」

「……なるほど」


 そこで、宮原も聞いた。

「他のものに跳び移りながら降りるのなら無事なんじゃ……?」

「それなら問題なく降りてくるだろう。でも、屋上から引きずり下ろすのが最少の作戦目的だろう?

 で、そのために手を打つんだから、その仕掛ける場所の設定はこちらの自由だ。つまり、跳び移れるようなものがないところで喧嘩を売ればいい。

 てか、そうしなかったらそれこそ馬鹿だろ?」

 これで岡部への反論は完全に終わった。

第46話 1年生には……

に続きます。

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