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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第29話 無謀


 一番もったいないのは、緩急をつけながら戦略的に走れるのはサッカー部だろうな。ラグビー部より、きっと素早くもある。そういう意味で、バリケード内に閉じこもっているってのは、赤羽としては長所の出しようがない状況だ。まぁ、時速50kmで走るとも言われている蒼貂熊(アオクズリ)に、その走りが通用するかは微妙だけど。


「赤羽、アイツ、実は間藤が好きなんだよ。だから、余計になにもできない状況は辛いんだろうな」

 何気なく言ったその言葉に、宮原は顔色を変えた。


 切羽詰まった口調で宮原は聞く。

「赤羽くん、今、どこにいる?」

「……どこって、奴は教室の中に……」

 そこで僕にも、宮原がなにを心配しているのかが伝わってきた。


「長尾!」

 僕の叫びに、木刀を抱えた長尾が近寄ってきた。

「期待されても、木刀じゃ居合刀以上になにもできないぞ」

「そうじゃないっ。赤羽は教室の中にいるか?」

「なんだなんだ?

 いないわけないだろうが」

「頼むから見てきてくれないか?」

 そこで長尾にも、僕の言いたい真意が伝わったらしい。一気に顔から血の気が引いて、足早に教室に戻る。


 ものの数秒だった。

「いない。どこにも」

 戻ってきた長尾の報告は、至極短かった。


「やっぱり赤羽……、出ていったんだね。

 経路は……。まさか1年生の避難した教室で堂々とベランダに出ていったとは考えられないよね。たぶん、非常口から出たに違いないよ。1年生の誰かが見ているかもしれない。すぐに確認をしないと……」

 そう言いながら、宮原の顔色が悪い。当たって嬉しい予想じゃないもんな。


「やめろ、ダメだ」

 僕は宮原を止める。

「赤羽は、間藤のために行動を起こした。だけど、これ、逃げたと思われたら1年生の間にパニックが起きる。我先とばらばらに逃げ出したら、片っぱから蒼貂熊に喰われる」

 僕の言葉に、宮原の顔色はさらに悪くなった。


「並榎の言うとおりだね。私、本当にバカだ」

「いいや、バカは赤羽だ」

 僕は宮原の言葉を思いっきり否定した。そもそも、赤羽の暴走に気がついたのは宮原じゃないか。バカなわけない。


 だけど赤羽のヤツ、気持ちはわかるけど、こんな状況の中で出ていったら犬死になる可能性があまりに高い。無謀にもほどがあるけど、本人には成算があったのだろうか?

「まぁ、あいつが間藤のために抜け出したとしたら、行く先は保健室以外にない。単身で救急を呼びに行っても、どうにもならないことはわかっているはずだ。それに対して、これからどう事態が転ぶにせよ担架がなければ間藤を運べないし、保健室に行ければ痛み止めの薬だけでなく他にもなにかあるかもしれない。そこに赤羽が希望を持つのはありそうなことだ」

 僕の言葉に宮原はうなずく。


「そうなると、また職員室に連絡して、蒼貂熊の注意を引くしかないかな?」

「いいや、宮原。出ていった赤羽と職員室の連携は取りようがない。

 それに、岡部の言ったことを忘れた?

 蒼貂熊に同じ手は通じない。ましてや、それで仲間が死んでいるんだから。そんなことしたら、職員室で犠牲者が出る。こちらからの依頼とはいえ、社会の猿田先生の囮役はあまりにお粗末だったんだから、蒼貂熊ほどの知能であれば仲間の死との関連を一発で憶えたはずだ」

「となると、やっぱり……」

 宮原の切れ長の目が据わった。動かない目で、ひたと僕を見る。これは、覚悟を決めた目だ。もう一度、絶望的な戦いに踏み込もうって目だ。

第30話 間

に続きます。

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