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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第57話 父と子


 スピーカーからは切り口上の声が流れ、悠はそれに向かって説明を重ねる。

「2つ目は、彼女らとは僕、約束をした。組織とのことでなにかあったとき、必ず呼ぶ、と。

 父さんのバディの菊池さんが学校に来て話したとき、宮原と北本もその場にいた。そして、彼女たちは、父さんの組織で仕事がしたいという僕の選択を間違っていると思っている。でも僕はそう思ってはいない。彼女たちにも、それを知って欲しい」

「……そうか」

 そう答えた声は冷徹だったが、どこか苦悩を感じさせた。


「悠。

 お前は若い。女性に対して誠を尽くしたいという気持ちはわかる。だが、それは、長い人生を過ごしたあとで振り返ったとき、正しい選択だったと言えるのか?

 俺から見ても、彼女たちの選択の方が正しいと思う」

 その父の言葉に返す、悠の言葉は辛辣だった。


「父さん。

 どういう顔で、それを僕に話しているんだよ?

 もしかして、自分の人生を後悔しているとか言い出すんじゃないだろうね?」

「今は悠の人生の話をしている。

 俺は無事に事件や災難を切り抜け、大団円としてこの仕事をしているわけではない。だが、過去のどの選択についても後悔していないし、また、どの選択にも必然があった。

 もう一度人生をやり直せるとしても、俺に他の選択は存在しない。いいや、俺の人生に、他の選択肢は用意されていなかった。だから、何度やり直しても同じ人生になるだろう。

 それに対し、悠の人生にはまだ選択肢が残されている。悠の人生だけでなく、宮原さんと北本さん、彼女たちの人生も変えてしまうのかもしれない。それを悠はよしとするのか?」

 その問いに対し、悠の返答に迷いはなかった。


「宮原と北本の人生は、彼女たちが決める。

 僕は彼女たちに選択肢を提示するだけだ。僕は彼女たちの神ではないから、僕が選択して彼女たちの人生を決めるようなことはできない。

 それに、彼女たちは僕の選択を間違っていると言いながら、それでも父さんの組織で働きたいと言っている。彼女たちの『間違っている』って言っているのは、みんなわかって言っているんだよ」

「……」

 なんとも言えぬ深いため息を、スピーカーは克明に空間に描き出した。


「美岬。

 悠は、どうしようもなくお前の子だな」

「あら、真、そういうこと言うの?

 私は、やっぱり悠は真の子だなって思ったわ。そして、初めて真がこの部屋に入ったときのことを思い出した」

 その返事には、しばらくの間があった。


「もう忘れてくれ」

「私のことを守るって、生命の危機の中でも真はそう宣言してくれたのよね」

「もう忘れてくれ」

「前前任の佐と大尉2人に、一高校生が喧嘩を売って」

「もう忘れてくれ」

「嬉しかったんだからね」

 その言葉には、「もう忘れてくれ」という返事はなかった。


「……悠。

 では、彼女たちにはきちんと説明してくれ。文字どおり、命賭けだと。選択したら、決して抜けられない、と。それでも彼女たちが選択するなら、その決断はやむをえないものとしよう」

 決断しきれない決断をする、苦悩に満ちた声だった。

 それに応える悠の声も、決して明るいものではない。


「わかった。リスクの説明を再度きちんとするよ。もちろん、僕はどっちの角度にも誘導なんかしないから」

「そんなことは当然だ」

 そう言い放った父の言葉はさらに続いた。

第58話 覚悟

に続きます。

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