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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第53話 作戦会議……提案


 美岬の確認に、悠は自分の思いを口にした。

蒼貂熊(アオクズリ)が襲ってきて……。

 鴻巣は死んだ。そして、死んだけど、僕たちに重要な知識を残していった。蒼貂熊(アオクズリ)の後頭部の装甲の後ろに続く、ここの柔らかいところが弱点だって」

 そう言って、悠は腕を廻し、自分の背中の一点を指差す。さすがに毎日弓を引いているためか、肩の関節は柔らかく、指先は的確に肩甲骨の間の背中の真ん中を指していた。


「さっきもコレ、言いかけましたが、そのときは硬い装甲の周囲は柔らかくなければ構造的に身体が動かなくなっちゃうからだって納得していました。だけど、その柔らかいところに、身体の重要な器官が集中しているのは可怪(おか)しくはないでしょうか?

 装甲で守るなら、弱点である部分を守ろうとするはずです。なんで、弱点が装甲の隣なんですか。可怪しいじゃないですか。

 そう思うようになると、コレ、蒼貂熊(アオクズリ)が人造生命という仮説も考え合わせれば、なおのこと可怪しいと気がついたんです。進化が偶然の積み重ねだとしたら、弱点が装甲の隣だっていうのは可怪しいですけど、それでも厳密に言えば確率は0ではないでしょう。なのに、人造生命であれば、そんな明らかなウィークポイントは、あえてそう設計しなければ生まれないはずだ、と思うんです」

「……なるほど」

 瑠奈がつぶやいた。


「つまり悠さんは、身体の重要な器官が装甲の隣に集中しているから、そこに魔素の取り出し口があるって考えたわけだ。

 で、あの巨大な蒼貂熊(アオクズリ)が暴れ出したら大変だから、その身体を固定するための機能が組み込まれていて……。つまり、魔素の取り出し装置との固定ポイントが至近であるってことがまだ人造生命らしいってことね」

 その瑠奈の補足にうなずき、悠はさらに続けた。


「僕たちが蒼貂熊(アオクズリ)を突き落として殺したとき、ヤツは後頭部をコンクリートの階段手すりにぶつけて死にました。コンクリートの階段手すりが崩れるほどの衝撃の強さだったんです。でも、装甲自体は結構耐えていたんですよ。

 つまり、装甲自体が蒼貂熊(アオクズリ)の身体の柔らかい部分に食い込んで、それで死んだんです。

 そのときは小さいスマホの画面での写真で見ましたし、そういうこともあるんだろうと思っていましたが、こうして話している間により理解が進んだような気がします。

 つまり、装甲が頑丈なのはいいけど、その頑丈さがあまりにオーバースペックだ、と。だって、その装甲は、弱点を守っていないんですから。

 今から思うと、鴻巣はそこがおかしいとすでに気がついていたんだと思います。だから、蒼貂熊(アオクズリ)の身体の柔らかい部分を刺して、動きを止めたんです。自らの命で、この仮説が正しいことを証明した。別の見方をすれば、そのときの鴻巣自身にとってはこれはまったく勝算のない賭けだった。今の僕たちほどの深く考える時間はなかったんですから。でも、だからこそ、死んだと思っていた赤羽のことを償うためにも、やるしかない賭けだった……」

「……なるほど」

 瑠奈は再びそうつぶやいた。


 2回目のこの「なるほど」は、話の内容より、悠の心情を(おもんばか)ってのものだった。鴻巣に対する悠の忸怩(じくじ)たる思いは、数多くの死を見てきた瑠奈には痛いほどわかっていた。だが、その悠の思いに全面的に同意し、寄り添うつもりはなかった。

 なぜなら、戦いに死は付きものであり、そこから生じた迷いに引き込まれると悠自身も死に魅せられてしまうと知っていたからだ。だからこその、興奮して語調も乱れがちな悠に対し、深すぎない相槌の「なるほど」だったのだ。

作戦会議……仮説補強

に続きます。

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