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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第50話 作戦会議……計画2


「そうですね。

 たとえば、東京の地下には廃止になった地下鉄の駅がいくつかあって、立入禁止になっている。空間としてのメンテはされているでしょうけど、その存在は忘れ去られている。そう言う意味では好都合だけど、蒼貂熊(アオクズリ)を都心まで運び込むのは避けたいわね。どうしても目立ってしまうから。不慮の事故の可能性も、まったく無視するわけにもいかない。

 あとは、首都圏外郭放水路とか……。通称、防災地下神殿と呼ばれているところね。ここなら埼玉の春日部だから、都心よりは目立たなくて済むかな」

「そこなら、雨が降ったという理由で、立入禁止にできますね」

 瑠奈の言葉に、美岬がうなずく。その言葉で話が一気に具体的になり、場の空気が熱を帯びた。


「あれだけ広い空間なら、各種実験設備の置けるし、檻を囲む形での封じ込め設備も制約なく作れる。コンクリで固められた空間だから、痕跡も残さず処理して撤収できる」

美岬の言葉に、異議を唱えたのは悠だった。

「あの甘ったるい獣臭は強烈ですよ。密閉空間だと、いつまでも残るかもしれない」

「周囲に人家が少ない立抗があったはず。そこから気流制御して高空に排気」

 美岬の口調は、独身の頃のそれに戻っていた。余計な単語は口にしない。短時間で情報を伝えるための訓練は、まだその身体の中に生きているのだ。


「そうね、さらに1回大雨でも降れば、どんな痕跡も残らないわね」

 瑠奈が補足し、ヨシフミも思いついた問題点を指摘する。

「天災は突然起きるものです。いくら台風シーズンを避けたからといって、大雨が降らないという保証はどこにもない」

「実験施設は測定、採取機器のみ置くこととし、そのすべてユニット化、一気に運び出すことを可能としておく。この目的は洪水対策にとどまらない。なお、データ解析、分析等は別地点で行う。これにより、1時間での撤収目標とする。その際には、蒼貂熊(アオクズリ)は処分の上、密閉容器に分けて入れて運び出す。この処理時には、チェンソー等使用しても構わないし、処理の際の汚物も洗浄不要だ」

 美岬の返答に淀みはない。20年前だったら、美岬の母、美桜が同じように指示を出していたのだろう。


「天気予報のこまめなチェックと組み合わせれば、それで行けそうですね。

 ただ、管理者との打ち合わせはどうしますか?

 どこまでを明かして説明して、協力を求めるんですか?」

 続いてのヨシフミの問いにも、美岬の答えは明快だった。

「首都圏外郭放水路の管理者は江戸川河川事務所、ひいては関東地方整備局、さいたま新都心だ。

 (しん)が毎日行っているところだ。どうとでもなるだろう」

「……なるほど」

 美岬の夫、双海真の手は、最初からそこまで伸びていたのだ。


「となると、蒼貂熊(アオクズリ)を捕まえなきゃですよね」

「そうだ。異世界からの生き物だから、公式に蒼貂熊(アオクズリ)を飼っている研究機関、動物園はない。現状では、種の保存、教育、調査・研究、レクリエーション、どれにも当てはまらないからな」

「教育はともかく、調査・研究もしてないんですか?」

「だから、公式には、だ。異世界から侵入してきた生き物だから、送り込んできた先方とのいわゆる外交問題が想定されるからだ。だが、非公式には飼育、実験している場所はある。悠の得てきた知見、ペリルアルデヒドへの耐性などは、そこで実験、確認した」

「……なるほど」

 話を聞くだけの星波だったが、こちらの世界がダーカスと社会の厚みが違うのだけはよく理解させられていた。

作戦会議……計画3

は想定外でしたw

思ったより伸びちゃった。

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