第47話 魔法とは……11
「なるほどね。
やっぱり、心理的障壁があるのかもしれないわね。
それに、恒星と惑星、衛星の違いを認識していたら、恒星の召喚なんて考えるはずなかったわ」
瑠奈のその納得を、悠は素直に受け取らなかった。
「面白半分でやってみた人はいなかったんですか?
人は論理だけで動くものじゃないでしょ」
だが、星波は言下にそれを否定した。
「いませんよ。
簡単な治癒魔法程度なら魔術師でなくても使える人はいますが、召喚ともなれば体内に多くの魔素を持ち、術式を学び、ノブリス・オブリージュを課せられた魔術師でなければできません。
そして、魔術師は魔法の怖さを知っているからこそ、そんなことはしません」
「となると……。
月の土を召喚すること自体に、なにか根本的な問題があるって可能性はありませんか?」
悠の質問に、瑠奈は悩み悩み答えた。
「おそらく……、月とかの異世界にもいろいろあるんです。
良いものをもたらしてくれる異世界と、触ったらよくない異世界と……」
「根拠は?」
「母に聞いてもらった方がいいです。と言っても、母も答えられないかもしれませんが……。私は、そんな気がするとしか言えません」
「……なるほど」
それはそうかもしれない。ルイーザ、星波の母娘が一つの世界の基幹産業とも言うべき魔術について、すべてを精通しているはずもない。
とはいえ、感覚として掴んでいることがそう間違っているものでもないのも事実なのだろう。
「小規模の封じ込め施設を運ぶなら、ロケットを運ぶより現実的ですよね。
で、その封じ込め施設の中に月の土を召喚するのならどうですか?」
悠の質問に、美岬が答える。
「それ自体はいい案だけど、封じ込められた月の土をどう分析するの?
その施設と人材まで運び込まなきゃ、意味がない」
その指摘には、瑠奈が答えた。
「封じ込めた月の土をそのまま、封じ込め施設ごとこちらの世界に送り返し、こちらで分析するなら?」
「なるほど、それなら可能かもしれない」
ヨシフミの答えに、星波が難しい顔になった。
「……その前に、円形施設の中に物を置いて、その中に召喚するということができるかどうか、私にはわかりません。魔素流が地に降りるときの力は恐ろしいものがあります。封じ込めのためのものが、その力に耐えられないかも……」
「それは、鳴滝さんとこちらの技術者で話す必要がありそうね。今は、それができない前提で話しましょう。策のバックアップはいつだって必要だから。
まだなにか、いい案はある?
この月の土が分析できれば、魔素の生産ができるかもしれない。敵世界の封じ込めもできるかもしれない。そうすれば、輸送、貯蔵、消費活用のすべてに目処がつく。ダーカス世界でも、こちらでも得るものは大きい」
その美岬の言葉に、瑠奈が答えた。
「蒼貂熊が魔素を集めているという仮説が正しいとすると、今の輸送、貯蔵、消費活用に、鳴滝方式以外の方法があるということにもなりかねません。
蒼貂熊の生理生態の正確な把握が必要でしょうね」
「……蒼貂熊に対して、魔法をかけてみたら?
それですべての疑問が氷解するんじゃない?
すぐにできるし……」
悠の提案に、場は静まり返った。
次話は、たぶん、作戦会議、です。




