第46話 魔法とは……10
「じゃあ、逆に提案というか、できるかできないかの確認なんだけど……」
「どんなことでしょうか?」
続けての瑠奈の問いに、星波は問いで応えた。
「ダーカス世界の月の見えている表面から、5m四方の土を召喚できない?
当てずっぽで、どこでもいい。見えているところだから、難しいことじゃないと思うの。で、召喚したら、その表面に魔法陣みたいのを設置して、派遣魔法で送り返す。
土の召喚と送り返しは同一地点だから、イメージ的に問題はないと思うんだけど……」
「いい案だとは思いますが……。
そんな遠くのものを召喚できるのかどうか。
それに、派遣魔法で月に行くのは……」
星波の答えは煮えきらないものだった。それに対して、鋭く反応したのは美岬だった。
「遠く?
ちょっと待って。ここに比べたら、比べ物にならないほど近いでしょ。
ダーカス世界は、この宇宙のどこかにある他の星じゃないの?
ものすごく時間はかかるけど、飛んで行けばいつかはたどり着く世界だと思っていたんだけど……。
それとも、次元とかが違う繋がっていない別の宇宙なの?」
「えっ、同じ世界だとは私も思いますけれど……」
星波の答えは自信がなさげだった。
「なら、ダーカスから見る月より、ここの方が遠いはずでしょ?」
「言いたいことはわかりますが、魔法はイメージの問題なんです。
どこかわからない場所の方が、見えている最遠より確実に近いんです。心の中では」
あやふやな口調の星波に、賛意を示したのはヨシフミだった。
「……わかるような気がする。だってさ、見えてさえいれば、どんなに遠くの星でも召喚できるということになりかねない。でも、どこがとは言えないけど、それは不都合があってできないような気がする。
それって、イメージの問題でもあるだろうけど、それ以上にそういうイメージを持たせない心理的ブロックがあって、それはたぶん、それが正しいことだからじゃないのかな」
ヨシフミの言葉に頷いて、星波は続ける。
「魔素が乏しい時代ならともかく、今は魔素は使い放題と言っていいです。
でも、月も含めて他の星からの召喚というのは考えたことがありません。他の星への派遣もです。現に、こちらの世界のことを他の星と思ったことは一度もありません。まず間違いなく、他の魔術師もです。異世界という認識はありますが、それが他の星という見方とは結びついていないんです」
「失礼な言い方で申し訳ないんだけど、それは天文学が未成立だからということでは?
星と言ったって見えているのは恒星で火の塊みたいなもん。陸とか水とかの惑星は絶対見えないし……」
瑠奈の言葉に、星波はむきになった。
「セフィロトとスノートの2つの月の軌道は、長年の観察から完全にわかっています。2つ月があったからこそ、ダーカスで天動説は議論されませんでした。『夜空に穴が開いていて、そこから漏れる光が星である』なんてことは、静的な宇宙論です。月が2つあったら夜空の動きはとても激しくて、諸天体が夜空に貼り付けられているなんて思えません。こちらより地動説を受け入れやすかったんです。
つまり、こちらに比べたら、天文学への障壁は少なかったんですよ。
だから、天の星々が実は巨大なもので光と熱を発していることも知っていますよ」
不必要なまでに星波が細かく説明したのは、ダーカス世界の知が貶められたような気がしたからなのだ。とはいえ、瑠奈がそういう意図を持っているとは思っていない星波だった。
魔法とは……11
に続き、その後はようやく別のエピタイトルになりそうですw




