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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第37話 魔法とは……1


「父は……、こちらの世界では上手く生きられなかったそうです。

 でも、ダーカスでは……」

「気を使いすぎる人は、大変だって真が言っていたよ。中学生のときだから、13歳、14歳の頃からたくさんの気遣いをして疲れ果てていたって。でも、ブラスバンド部では頑張っていたって聞いたよ」

 父が上手く行かなかったという、こちらの世界に対する含みを口に出した星波だったが、思わぬ美岬の返答に目を丸くした。


「……父、楽器の演奏なんかしてたんですか!?」

「知らなかったの?」

 逆に美岬に問われて、星波は返す言葉がない。


「ダーカスでバンド組んで、演奏会やればいいのに」

「えーーーーーーと、その件については持ち帰らせてください」

 ダーカスに楽器は少ない。

 祭礼でもほとんど鳴り物はない。

 そんな中であっても、今のダーカスの経済状態の余裕から考えたら、音楽活動が許されないとは思えなかった。祭りの機会自体は多いのだ。その際での演奏会はきっと楽しいだろう。

 だが、それだとしても、星波にはそんな父の姿が想像できなかった。


 これにも理由があった。

 この話をしたのが中学生時代の同級生であった双海真であれば、バリトンサックスを吹く鳴滝の姿の記憶がイメージとして伝わったのだろう。だが、話したのが美岬なので、そのような記憶はない。ただ、オーケストラの演奏会の雰囲気だけが伝わっている。

 その雰囲気と、鳴滝の持つ雰囲気が一致ないのは当然のことだ。



「それはともかく、今の治癒魔法を見ていて思ったんだけど……」

 瑠奈が話を戻した。

「私たちは、生気(プネウマ)をこういう形で使ったことがない。しかも、使ったとしても共に人間じゃないから、ここまで疲れない。だから、ここからは魔素と生気(プネウマ)の同一性は語れないけれど、逆にこれも2つの世界での目的の違いを整理することになった気がする。

 魔素は現状を改良する道具になっている。

 それに対して、生気(プネウマ)は現状を変える道具だよね。

 同じものと言っていいけど、なんかいつも微妙に食い違う気がする」 

「言われてみれば、確かにそうかも……」

 ヨシフミが同意する。


 そのヨシフミの声に、星波が顔を上げた。

「父が言ってたんです!」

「なにを?」

「魔素は2種類あるって!」

「先に言えって!」

 思わず、ヨシフミはそう突っ込んだ。


「だって、魔素の2種類は小さな違いしかないし、生気(プネウマ)の方がより違うものだって思い込んでいたんです。それに、みなさんだって、おんなじものであるわけないって、心のどこかで思っていたでしょっ!?」

 そうなのだ。イメージ先行の魔素石翻訳は言外の思いまで伝えてしまう。

 コミュ障であった星波の父がダーカスで生きてこれたのは、逆にこのためでもある。うだうだと悩み考えている間に、相手に意思が伝わってしまう。魔素石翻訳は、鳴滝のコミュ障専用ツールと言っていいほどの相性の良さを示していたのだ。

 だが、場合によると、このような誤解も生じてしまう。


 瑠奈とヨシフミは、異世界の魔素と言うものに対して、どことなく胡散臭い思いを拭い去れていなかった。これはもう、普通に市井に生きている人たちが、いきなり超能力の話を振られたときに見せる防御姿勢のようなものだ。至極当たり前で、真っ当な反応ではあったのだが、それが魔素石翻訳で星波に反映し、どことなくその思考を妨げていたのだ。

第38話 魔法とは……2

に続きます。

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