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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第34話 エネルギー史


 だが、そこでふと悠は疑問を感じた。

「ニュートンは、薔薇十字の団員にはなっていなかったんですか?

 たくさんの優秀な人が、理想に賛同して声がけするだけで入ってくれたと思いますし……。それに、人間だったら長生きしたいと思うものだから、高度な医療技術を持つ組織には無条件で入りたいと思うものでしょ」

 美岬の問いに、瑠奈は苦々しげな表情になった。


「……彼はね、ウチだけでなく、秘密結社の一員に迎え入れられるような人じゃなかったのよ。

 人類史上でも業績は飛び抜けていたけど、仁にも篤いということはなかった。薔薇十字の片足は、常に医療にある。医は仁術というのはもう口に出しにくい時代になってしまったけど、それでも人を救うということは、そういうことなのよ」

 悠は、それを聞いて胸が締め付けられる思いになった。患者側が医側に果てしない無償奉仕を要求し、医側の生活が破綻するような事例が例外でなくなったら、そもそも医側の医を目指した理想は擦り減らされてしまう。

 だが、それでも、医側は人に対する冷酷さを持ってはならないのだと、瑠奈は言っているのだ。


「……ニュートンって、そんな人だったんですか?」

「科学論争の相手を、完膚なきまで叩き潰してた。相手のパーソナリティと立場を別に考えるってことができなかったみたいよね。訴訟に明け暮れていて、論争した相手には、それこそ徹底した嫌がらせをしていた。さらには、王立科学協会の実権を握ったときには、そこにあった学説の論争相手のロバート・フックの肖像画を処分したりと……。

 こういう人間に、高度な秘密を漏らすのはちょっと怖すぎたのよ。

 薔薇十字でも理論はあっても賢者の石は作れなかったから、ニュートンの知見が欲しかったのは事実なんだけどね。どうしても距離を置かざるをえなかった」

「……怖いです。すごく怖いです」

 悠の言葉は、すべてを理解したという実感がこもっていた。

 彼が、知の巨人であったことに疑いはない。だが、それは無欠の人間性を意味しない。そのこと自体が怖いのだ。


「まぁ、仕方ないことよ。よくあることだから。

 ともかく、これからも1つの推論が出せるわね。

 昔、魔素が濃い時代があった、だから、その魔素を扱う技術が短期間で完成した。だけど、魔素が失われるとその技術は形骸化し、その形骸化したものですら私たちの組織のような場所でないと保てなくなった。

 そう考えると、生気(プネウマ)という言い方は正しくない。魔素という言い方のほうが正しいと私は思う。

 だって、宇宙に偏在していて、そこを地球が通るかどうかで決まるようなものを、生物由来の生気(プネウマ)という言葉で表すのは少しズレていると思わざるをえない。『魔素』の『魔』という字に違和感も感じるけど、それでも生気(プネウマ)よりは実態を表していると思う」

「そうですね。それについては私もそう思います」

 星波が言い、美岬も頷いた。


 ヨシフミがつぶやくように言う。

「前に、核融合炉、そして対消滅炉なんかの膨大なエネルギーを生み出す技術の元には、化石燃料という一握りのスターターが必要不可欠だというのを聞いたことがありました。

 ダーカスの魔素の時代も、地球での一瞬のスターターがあったからだったんですね」

「そして、それがあったからこそ、今の僕たちは戦える」

 そう返した悠の言葉に、再び場は緊張を取り戻していた。

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