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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第32話 ワープと召喚


 このような場とはいえ、ヨシフミの両親の恋愛話を詳しく問うのはさすがに憚られた。なので、悠の言葉は、ひかえめなものとなった。

「……ヴァンパイアになったのは、親子2代の研鑽だったんですね」

「いや、まぁ、偶然だけどね」

 そう答えるヨシフミも、憮然と照れが混じった表情になっている。


「ともかく、歴史の流れは定められた道筋からは変わらない。最悪の独裁者がいたとして、その彼をタイムマシンで行って赤ん坊の頃に殺したとしても、代わりになる新たな独裁者が生まれるだけだ。そういう特異な人間は、ゴムチューブの向かう方向、すなわち時代の要請が生むんだよ。だから、第二第三の独裁者候補が用意されているんだ」

 そこで皆、押し黙った。理解し、納得するのには、少々の時間が必要だったのだ。


 だが、ヨシフミは構わず説明を続けた。

「そもそも錬金術だって、この世界の物理法則だけに従っていたら、実現不可能でしょ?

 それを愚かな迷信と決めるのは容易だけど、そうなると当時、錬金術師のパトロンとなった貴族たちはみな愚か者ということになる。

 違うんだよ。数は極めて少ないけど、成功例があった。貴族は横のつながりが強いから、確度の高い情報として成功例が伝わった。だからこそ、際限のない愚かさが再生産され続けたんだ」

 これには、美岬と悠、そろって目から鱗が落ちたという表情になった。


 そこにずしりとした重さを持った、星波のつぶやきが響いた。

「……私の世界では、賢者の石はありふれたもので、むしろ嫌われています。せっかく精錬した鉄鋼まで金にしちゃいますからね。で、金じゃ農具にも荷車の車軸にもなりゃしない。

 だけど、大量の魔素で賢者の石を作るのは、()()こちらの世界ではほぼ不可能なんです」

「じゃあ、さっきの短剣も……」

 そうなのだ。大量の魔素、もしくは大量の生気(プネウマ)から生成されたものという意味では、2つに差はない。


「そういうことになるわね。

 賢者の石を作るために、大量の生気(プネウマ)が必要だった。だから、生気(プネウマ)の扱うための技術は、歴史上の早いうちに成立した。きっと、短くても生気(プネウマ)の濃い時代があったんでしょう。それを応用して賢者の石という形ではなく作られたのが、あの短剣だった」

「そうか、わかりました。

 賢者の石は鉛や鉄を金に変えて、そのたびに減っていってしまう。どれほどの犠牲をもって作り出されたとしても、消耗品にすぎない。だから、触れた金属を金に変えるという機能を無くして、不動の形にしたのがあの短剣ということなんですね。

 きっと、魔素が急激になくなってしまう中で、魔素の技術を後世に伝えるためです」

 瑠奈の言葉に、星波が補足した。


 それにうなずいてみせたヨシフミは、さらに言う。

「そう、今の話のとおり、こちらの世界でも過去に魔素、もしくは生気(プネウマ)が濃い時代があったんでしょう。でなければ、そもそもの技術が作られない。

 そして、星波さんがこちらに来たような派遣と召喚によって、人類は宇宙のいたるところに広がっていった。もしかしたら、将来の人類がワープ技術の開発として、派遣と召喚の技術を再発見するかもしれません。

 だって……」

 と言いかけるのを、美岬が引き取る。


「アプローチは違っても、どちらも一旦は宇宙というゴムチューブの外側に出て、戻って来る技術だから」

「そうです。そのとおりです」

 話を聞いていた悠は、推論されて組み立てられていく歴史の壮大さに、めまいに似た感動を覚えていた。

第33話 状況証拠

に続きます。

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