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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第29話 秘密結社


「そもそもだけど、秘密結社が存続するための条件ってなんだと思う?」

 美岬の問いに、瑠奈は答える。

「まずは経済的なリターンよ」

 瑠奈に対して、そんなことを聞けるのは美岬だからだ。自らの属する組織、属していた組織の立場で言うなら、薔薇十字より美岬の属していた組織の方が古い。他の誰かに同じことを聞かれたら、瑠奈だって「烏滸(おこ)がましい」といらっとしていただろう。


「そのとおり。それがなかった時代、私たちの組織は3人まで人数が減った。潜在的支持者、賛同者はいたけど、彼らに組織の一員としての行動は期待できなかった」

「そうね、よくわかる」

 瑠奈の返事に、美岬はうなずいた。


「でもね、秘密結社をやっているってことは、その構成員にとって守りたいものがあるってことでしょ。その守りたいものがどれほどの価値があるかによって、またそのおこぼれを利用できるかによって、経済的余裕の度合いが決まってくる」

「それもわかるわ」

 瑠奈は、素直にうなずく。

 悠は自分の母の始めて見せる姿に圧倒されながら、それでも話を理解しようと会話のひとつひとつを聞き漏らすまいと目を見開いている。


「この場合、守っているのは魔素生気(プネウマ)の技術。ところがね、この技術は技術という概念でしかない。肝心の魔素か生気(プネウマ)がないんだから。となると、例を上げるなら、ガソリンがない車の設計図を維持し続けるようなもんで、コストばかり掛かって見返りがまったくないということになる。必然的に、その構成員は極少ということにもなる」

「……なるほど、そうね」

 瑠奈はうなずき、美岬は話を続ける。

 

「しかも、時とともに技術的確実さは失われていくし、そもそも本当に使える技術なのかすらあやふやになっていく。だって、誰ひとり、動く車を見たことすらないんだから、その設計図が妄想の産物なのかという疑いすら湧いてしまう。

 そんな中では、よほどの信念がないと自分が守るものを信じ続けられないわ。

 ましてや、組織の人数も減る一方の中で、それでも自らのアイディンティティを失っていないとしたら……」

「……極めて強い、信念と自己抑制の意思がある」

「そういうこと。そうだとしたら、その彼らがあえて人類を敵に回して、蒼貂熊(アオクズリ)の味方をするとは思えない」

 瑠奈がそう口にし、自ら納得したところで、悠が口を開いた。


「質問があります。僕が前提を理解していなくて、馬鹿なことを聞いていたらごめんなさい。

 近現代でも虐殺はありました。現在進行系でもあると思います。それらの陰でエネルギーを得て、動く車を維持していたら見返りも大きいんじゃないでしょうか。

 想定されている秘密結社が、そういう路線を取っていない保証はあるのでしょうか?」

「そうです。

 虐殺をする側に回っている可能性だってありますよね?」

 と、星波も口を揃えて疑問を呈した。


「ええ、心配ね。

 でも、大前提があるでしょ。忘れた?」

 美岬に問われて、悠は視線を彷徨わせた。

「虐殺をする側に回って生気(プネウマ)を得ているとしたら、今回の事態にはどう感じるだろう?」

 そう言われて、悠は考え込む。


 自分の母親と、こんな議論をすることなど、今日という日が来るまで想像もしたことがなかった。

 父が母と結婚したのは、母のこちら側の顔のためなのだと今にして思う。

 悠は現在、宮原雅依(かえ)と北本珠花(みか)の三角関係の中で、微妙な安定を保っている。宮原は綺麗で、北本は可愛い。だが、いずれどちらかを傷つけ、どちらかを選ばなければならない。

 父母の関係も、きちんと聞いておくべきことだと悠は感じていた。

第30話 力関係

に続きます。

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