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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第28話 星波の仮説


「少なくとも、技術を確立させることはできる機会はあったんですね」

 悠がどこか寒々しいという口調で言う。

 それに対し、意を決したように強い口調になったのは星波だった。


「父が言ってました。

 ダーカスの世界はそこで生まれたものではないだろう、と。

 おそらくは中近東のどこかの人間と家畜、生活様式が転移させられたのではないか、と。今のダーカスに残されている宗教形式からしても、それは相当に古い時代だったはず、と。

 なぜ父がそんなふうに思ったかと言うと、元々いたであろう生き物と、人間とその周囲の生き物で、形態が違いすぎるというのです。

 ここで先ほどの人類の暗黒史を聞いて、そのような虐殺から転移して逃げた人たちが私たちの先祖である可能性は高いと思ったのです」

 誰もなにも言わなかった。いや、言えなかったのだ。


 星波の今の仮説は、思いつき以外の何物でもない。否定は簡単だ。だが、その気にはどうしてもなれなかったのだ。

 それに、異世界の人間だとしても、星波もその母のルイーザも人間すぎた。ルイーザと鳴滝が子どもを為したということは、共に同じ種の生物だということになる。宇宙の彼方同士で、進化が収斂して同一種になることなどありえないのだ。となれば、ダーカスの世界の人々は、地球からの移民の子孫としか言えない。

 星波の考えが推理し突きつけた歴史の真実は、あまりに重いものと言えた。


「そして、そうだとすると、昔の地球には召喚・派遣の技術もあったということになります。魔素の物質化も可能だったのかもしれません。もしかしたら、地球にも魔素が豊富にあった時代があったのかもしれませんし……」

 星波がそう続け、美岬もそれに同意を示して口を開いた。

「私は魔法はわからない。魔素も生気(プネウマ)もわからない。だけどね、アインシュタインの特殊相対性理論では、E=mc^2という関係式で、質量とエネルギーは等価とされている。それこそ膨大なエネルギーがあったら、物質化もできるのかもしれませんね」

「……そうね」

 瑠奈も、未だに悩みつつも首を縦に振った。


「考えてみれば、薔薇十字の開祖、C.R.C.クリスチャン・ローゼンクロイツは、東洋に秘儀を学びに行ったのよね。私たち、薔薇十字の構成員はどうしてもC.R.C.を神格化してしまう。

 だけど、その彼にも師はいた。間違いなくいた……」

「テクニカルな話とC.R.C.の理想、これらは別なんだから、C.R.C.に師がいたっていいじゃん。C.R.C.の人間的価値は下がらないよ」

 ヨシフミの指摘に、瑠奈の顔は険しくなった。


「話はそこじゃないのよ。

 師がいたということは、師の師もいたでしょう。さらには、師の属する組織もあったかもしれない。私たち以上に歴史の闇に隠れている組織があるとしたら、そしてその組織が生気(プネウマ)や魔素に対する高度な技を持ち続けていた場合……」

「彼らを突き止める方法はないわ。あまりに手がかりが少なすぎる。今さら1000年前の調査はできないでしょ」

 美岬の言葉に、さらに瑠奈は首を横に振った。


「そこが、敵に回る可能性だって考えておかないと……」

「それはないわ。そういう組織を想定したとしても、彼らが人類の敵に回ることはない」

 美岬の否定は断言と言っていい明快さだった。




第29話 秘密結社

に続きます。

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