表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

240/278

第21話 呪文の本質


 抽象的なことをどう理解し説明するか、そのための語彙はダーカスよりこちらの世界の方がはるかに多いようだった。ダーカスの水準では極めて高い教育を受けた星波ではあったが、言葉の不自由さがなかったとしても、瑠奈と議論をしたら勝ち目はないと感じていた。


 だが、瑠奈は「やりすぎた」と舌を出した。

 260歳の瑠奈が、16歳の星波に語彙で(まさ)っていることを明らかにしても、それは失態に過ぎない。そう反省したからの照れ隠しだった。

 星波の気持ちも知らぬげの行いでありながら、その実、最も理解していたと言っていい。


 そして、そんな瑠奈の思いに気付かぬようで、ヨシフミがつぶやいた。

「ああ、それは理解できるなぁ」

 と。

 ヨシフミはオカルトの知識の実践者だ。オカルトという果てしない迷路に囚われないための注意と警戒は、どのようなときでも止まることのない習性になっている。だから、「個人の抽象的な認識の混沌と漠然の中に術自体が沈んでしまう」という言葉に、深く納得したのだ。

 だが、星波にはまだ、それを実感できるほどの経験がない。

 ヨシフミはまだ、それを推し量ることができなかったのだ。


 悠は悠で、まったく実感はできなかったが、それでもなんとなく今までの会話は理解していた。

 当然のことだが、普通の高校生である悠に魔法のことはまったくわからない。だが、受験を控えて日々相当量の勉強をしているから、その知識から演繹したのだ。


 たとえば道に生えている雑草を分類して記録するとして、コケ類、シダ類、裸子植物に被子植物、双子葉植物に単子葉植物、いろいろな分類項目をきちんと理解して、表に整理していかなければ不可能だ。独りの人間がなんとなくの項目で漠然と分けていくなど、限界があっという間に来て混沌としてしまうだけだ。

 魔法だって、整理という意味からは同じことが言えるはずだ。思考とイメージなど、無限大なのだから。その整理のために言葉を使う、それが呪文なのだ。


「そうなると……。

 膨大な数の単語の単純な組み合わせで呪文ができていて、呪文になることで魔法が整理して理解できるものなのだとすると、蒼貂熊(アオクズリ)が魔法を使えないのが不思議です。だって、体内に魔素を溜め込んでいて、仲間と意思の疎通もしているんですから、彼らなりの言葉もあるはずです。

 いや、仮説が正しいとすると、使えないようにしてあるというのが正しいのでしょうね」

 悠がそう言ったところで、美岬が顔を出した。



「1回キリつけて。夕食、運ぶよ。

 悠、手伝って」

 そう言われて、悠が立ち上がる。


 すぐに、美岬がワゴンで夕食を運び込んできた。悠は、大きなバスケットを抱えていて、そこからは大きなパンがいくつも顔をのぞかせていた。どうやら焼きたてらしく、部屋の中に一気に香ばしい香りが満ちた。


 だが、ヨシフミだけが、その姿に違和感を抱いていた。星波はこちらの世界で初めて見るものだったし、瑠奈(るいな)はフランスの自分の会社のワイナリーで見慣れた当たり前のものだったから、違和感など感じるはずもない。


 使われていたのは業務用の、棚板1枚あたり250kgもの荷重に耐えられるワゴンだった。料理を運ぶにはオーバースペックすぎる。おそらくは、想定された他の用途があるに違いないとヨシフミは想像した。

 そして、そのワゴンの上には、ヨシフミのために真紅のバラの開きかけの蕾が1ダース、瑠奈には3kgはあろうかというブルーの特大ステーキ、それから星波と悠、自分自身へは羊肉のブレゼ(蒸し煮)が乗っていた。

第22話 夕食

に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ