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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第16話 敵を知る


 美岬がそこで、手をぱんっと打ち合わせた。

「あとは、ご飯を食べながら話しましょう。きっとその方がさらに打ち解けられるでしょ。星波さんも、報告はそれからの方がよくはないかな?

 だけど、ヨシフミくん、さすがに生き血は用意できないから、君は赤いバラでいいのかな?」

「あれば、そちらの方が嬉しいです。

 僕、人間の食事を食べることはできますが、食べることができる、と言うだけなんです。味もろくに感じませんし……。

 これ、食べ物に対して、ひたすらにの申し訳ないんです。それに、ニンニクとかが入っている食べ物はひたすらに辛くて……」

 そう言いながら、ヨシフミは思い出す。


 ヴァンパイアになったばかりの頃、母親に「好き嫌いはダメよ」と強制された日々を、だ。ニンニクまでいかなくても、そうめんの薬味のネギですら、ヴァンパイアにとっては苦行以外のなにものでもない。

 もちろん、両親には自分がヴァンパイアになったことは伝えた。だが、「はいはい、中二病乙」という対応で終わらせられてしまったのだ。


 星波以外のここにいるすべての人間が、ヨシフミの苦悩の表情に共感を示していた。その根拠が怪しいB級映画だったとしても、ヨシフミにとってはありがたいことだった。

「ヴァンパイアだもんね。そりゃ、ニンニクはダメだよね。ネギの仲間も避けなきゃだよね」

 その共感を口にした美岬は、再びどことなく嬉しそうだった。


 もしかしたらとヨシフミは思う。

 この美岬という女性、誰かの役に立てるのが嬉しいのかもしれない、と。

 おそらくは、引退したというのは事実だ。だけどそれによって、誰かの役に立っているという自覚を持てる機会が減ってしまったのかもしれない。

 料理研究家としてテレビに出ている姿は、ヨシフミも見たことがある。それなりに生き生きとしていたが、あれは本人にとってはあくまで仮の姿なのだ。おそらくは、それで自分がなにかに役立っているとは思えないのだろう。むしろ、身を隠すためにこそ存在をアピールするという戦術に、引け目を感じている可能性すらある。本人の力もあるだろうが、組織の力でテレビにも出ている部分もあるのだろうからだ。


 さらに、双海が考えていることはもう1つあるだろう。

 おそらく、現役から開放されて感情表現を隠さなくなった美岬に、この役割は最適なものとも考えたに違いない。

 感情豊かな人間の方が、私的な関係を結びやすいからだ。


「瑠奈さんには、肉主体で用意しているから。星波さんは、ダーカスの料理のレシピを聞いているから、それを作るね。素材が同じじゃないから味も違うし、こちらの食事にはそれからだんだんに慣れてくれればいいから。25分、待っていて。

 悠、お客様のお相手をお願い」

 矢継ぎ早の言葉に、呼びかけられたそれぞれが礼を言う間もあらばこそ、美岬は客間から出ていってしまった。


 取り残された悠は、ホスト側の人間として、その場を取り持つためになにか言わないといけない気がしていた。

「僕も初めて知ったのですが、ここでの話は外部から聞かれているんでしたよね。なら、母も調理しながら聞いていると思います。

 まずは、僕の経験から話します」

 その言葉に、3人はうなずいた。


 時間はたくさんあるし、魔素や生気(プネウマ)の話は、中断なしのぶっ続けでした方がいい。なら、その話は食後にして、先ずは敵のことを知っておくのは時間の使い方として無駄がないという判断が一致したのだ。

第17話 毒

に続きます。

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