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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第14話 ヴァンパイアとして生きる


 星波は、美岬から借りた筆記具と紙に瑠奈から聞いた話を記し、それを封筒に入れる寸前で手を止めた。そして、視線を上げて聞く。

「すみません、ヨシフミさんでしたっけ?

 あなたはどういう方なのですか?」

 その質問に、ヨシフミが視線を星波に合わせる。


「……なんと言ったらいいのかな、端的に言って、僕は人の血を吸う化け物です。そして、血を吸われた者はやはりヴァンパイアになります」

「吸血の期間はどれくらい?

 吸血にともなう作用効果の選択はできるのですか?」

 これは星波ではない。美岬の問いだ。


「さすがの質問ですね。

 ヴァンパイアの数が危機になるとしたら、純粋に算数の問題ですからね。でも、ご心配のようなねずみ算にはなりません。ならなかったのにも理由があります。

 もちろん、血を吸ってもヴァンパイアにしないこともできますし、私自身は血を吸わなくてもかなり長い時間平気です。それに、血の代わりに赤いバラの花から生気(プネウマ)を吸うこともできますから、飢えることもないんです。

 だって、見ず知らずの人の首筋に噛みつくって、キモチワルくないですか?」

「……吸血鬼のセリフなの、それ?」

 そうつぶやいたのは、悠だ。


 ヨシフミは、その悠の言葉を無視して続けた。

「現に私は、一度も吸血をしたことがないんです。その方が、平和に生きていけますしね」

「それって、普通の人と違わないということになりかねないんですが?」

 これは星波の問いだ。

 そもそも、血を吸って生きるということがどういうことか、よくわかってはいない。そもそもダーカスにはこういう種類の怪談はなかったし、弓矢以上に概念自体がなかったのだから当然のことだ。

 それでも、「人の血を吸う化け物」と定義された存在が、それを嫌がるってのはよくわからない。それはすでに、別の存在ではないかと思うのだ。


「でも、ほら」

 そう言った次の瞬間、ヨシフミは瑠奈の隣から美岬の隣に立っていた。

 美岬は、ソファの下に手を突っ込むという無駄な行為はしなかった。銃把を掴み、銃口を向け、引き金を引く。これは3動作となり、あまりに時間がかかりすぎるからだ。

 美岬は低い体勢のまま瞬時に踵だけを跳ね上げて、ヨシフミの首筋を襲った。真下からの、そして距離が近すぎるがゆえに、ヨシフミには見えないはずの鋭い攻撃だった。


 すぱっという空気を切り裂く音に、ぼばっという大きく空気が動く音が重なり、ヨシフミの姿が見えなくなった。

「なにが、引退した身、ですか?

 僕を殺す気ですか?

 もっとも、僕は死にませんけど」

 そう言うヨシフミは、すでに瑠奈の隣に戻っており、話を続けた。


「ヴァンパイアは、自分の身体を霧に変えられるんです。だから、物理攻撃は効きませんよ。外で風がある日なんかはこうは行きませんけど、室内だったらこのくらいのスピードは出せますし。あと、コウモリにも姿を変えられますが、こちらは飛べてももっと遅いので……。

 他にも歳はとらないし、その気になれば怪力を出せますし、でも、日中太陽の下は歩けません。今も思いっきりSPF50+でPA++++の日焼け止めを大量消費してますから。

 星波さん、つまり僕は、これだけでも人間とは大きく違うんです。違う生き方を選ばざるをえない」

「失神した星波さんを支えられたのも、速すぎるとは思ったけど、そういうことだったのね?」

 美岬の質問に、ヨシフミはうなずいた。

第15話 星波の報告

に続きます。


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