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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第8話 ヒトとは異質な存在


 星波は聞く。

「誰かが、この部屋を見ているのですか?

 今も?」

 星波は聞かずにはいられなかった。

「真の組織の人たちよ。この家は鉄壁の守りで、敵の侵入を許したことはない。だけどね、襲われたことは何度もあるの。だから、常に安全確認がされている。

 もちろん、移転の話はあったけど、私が生まれ育った家だし……。

 そしてなによりも、予算がなくてね……」

 ダーカスならば、王様の一言で建物の建て替えぐらいはできる。ここでは、そのあたり、どうなっているのだろう?


「……国の機関なんですよね?」

 その星波の問いに、美岬は複雑な表情で笑った。まだまだ、美岬が隠していることは多そうだった。

「違うわ。自分たちで稼いでいるのよ。

 日本の公金はほとんど入ってないわ。可怪しな話だけど、アメリカの諜報機関の下請け調査やっているから、アメリカの税金なら入っていると言えるかもしれない」

「……そうなんですか」

 星波はそうとしか言いようがない。そもそも、美岬にすべて打ち明けられても、こちらの世界に対して理解するだけの知識もないのだ。


「あと、こちらの世界には魔素がないと聞いてますし、実際に来てみてそうなんだろうなと感じています。そんな中、こちらの世界で『魔法が使える人たち』って、どんな人たちなんですか?」

 星波の問いに、美岬が答える。だが、その語調は複雑なものだった。口にするのに、相当な葛藤があるようだったのだ。


「……そもそも、ヒトであっても、ヒトとは異質な存在だと。

 何百年も隠れていて、真が見つけなかったら今も隠れ続けていた」

 これにはさすがの星波も、言葉を失った。


 話からすると、双海真の優秀さが際立っているように聞こえる。だが、それだけではないだろう。美岬も、ことさら双海真の優秀さを誇示する口調でもない。今のことも、双海真が見つけるまで、何百年も隠れ続けた実績があるとも言えるのだ。

 こうなると、双海真が絶対的に優秀と取ることもできるが、それよりも巡り合わせがあまりに悪かったともいえる。


 つまり、じゃんけんのようなものだ。星波の世界では、仔ヤヒウとヤヒウ、ヤヒウ飼いの、だ。仔ヤヒウより親ヤヒウが強く、親ヤヒウよりヤヒウ飼いが強い。なのに、ヤヒウ飼いを毎日振り回すのは仔ヤヒウなのだ。最弱に見える仔ヤヒウでも、相手の巡り合わせによっては勝ててしまうものなのだ。

 この考えは、星波を緊張させた。

 つまり、油断すると、魔素が充填されたコンデンサを持ったまま、なすすべなく星波も負けるかもしれないということだ。


 しかも、今の話、考えるべきはそれだけではない。

 そもそもダーカスどころか、魔法学院でも人間以外が魔法を使うことは考えていない。

 というか、そもそも星波のいた世界では、家畜のヤヒウと下水などに巣くうネマラ、それから高緯度地域だけにいる猛獣トオーラぐらいしか人間以外のめぼしい生物はいない。陸上ではすべての生態系が魔素流で焼き尽くされてしまったからだし、生き延びたどの生き物も人間に匹敵するような知性は持っていない。

 だからこそ、星波の父の『始元の大魔導師』様が、牛や鶏、猫や犬までもこちらから連れてきたのだ。もちろん、海は別で豊かな生態系があるが、水中では魔素は拡散してしまうから、海の生き物が魔法を使うのはありえない。

 これをどう取っていいのか、星波は悩んだ。

第9話 ようこそ

に続きます。

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