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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第3話 美岬(みさき)


 玄関の前で(ゆう)が言う。

「一応お伝えしておきますが、なにかあったら、この家を目指し、逃げ込んでください。僕も昨日知ったのですが、この家は要塞並みの壁の厚さとエレクトロニクスで守られています。ここに逃げ込めれば、絶対安全です」

 その悠の言葉に、星波はうなずくことしかできなかった。


 イメージとして概念は伝わってきたのだが、それはあまりに星波の理解を越えたものだったのだ。鉄の塊が帯状の車輪で進んできて、筒から火となにかの塊を撃ち出してくる。恐ろしい光景だった。

 いろいろなものが吹き飛ばされてしまう中で、この家の壁は崩れずに持ちこたえている。だが、そんなものは、片鱗すらダーカスにはなかったのだ。


 悠は鍵を取り出し、玄関の戸を開ける。

「おかえりなさい」

 玄関に入った悠に、声が掛かった。星波はそちらに目を向ける。

「星波さんよね?

 ダーカスのお屋敷の広さはないけれど、辛抱してくださいね」

 そう言われて、星波は「ありがとうございます」ともごもごと答えた。不意打ち過ぎて、とっさに日本語が出てこなかったのだ。


「私は双海美岬(みさき)。悠の母で、双海の妻です。歓迎しますよ」

 長くつややかな髪は背中で無造作に束ねただけ、服装は灰色と黒を基調とした地味なものだったのだが、星波は吸い寄せられるように視線が外せなくなった。


 母のルイーザは、星波と姉妹と見られるほど若々しい。魔素を含んだ水を生活に使っているのだから、ルイーザだけでなく、ダーカスで生活している者はみな長寿で暦年齢よりは若々しいのだ。鳴滝が現れたことで初めて明らかになった知見である。

 だが、そのルイーザをもってしても、美岬と名乗った悠の母親には敵うまい。単に若々しさという単純なものではない。年相応のしっとりした落ち着き、今まで生きてきた軌跡に対する自信、その全身からにじみ出る生命力、そういった諸々までもが魅力となっている。


「鳴滝星波です。

 よろしくお願いいたします」

 それでもようやく星波の口は動いて、不慣れな日本語を紡ぎ出した。

「悠、とりあえず客間にお通しして。お茶を淹れるから、それから落ち着いて話しましょう」

「こちらへどうぞ」

 そう言われて、星波は悠を見習って靴を脱ぎ、家の中に上がった。

 そして、先ほど悠が言った言葉の意味を、その目で見て理解した。ダーカスの石造りの家と同じだけの壁の厚さがある。そして星波は、口の中で素早く呪文を唱え、その壁には太い鉄が仕込まれているのを、資源探しの魔法の力で見て取っていた。

 おそらくは、鉄だけではない。薄いが鉛の板も入っているようだ。だが、どうしてそんなものまで壁の中に入っているのか、これも星波にはわからなかった。

 ただ、これで確実になったのは、双海美岬が嘘を言っていないということだ。星波は、その確認をしたかったのだ。


 客間だというこの部屋には、低いソファとテーブル、そして1つの壁一面が真っ黒な板が掛けられていた。複数の巨大なディスプレイなのだが、星波の理解の及ぶところではない。

 ここは、緊急時の戦闘指揮所(C.I.C.)機能を持たされた部屋なのだが、今は巨大なAVシステムがある部屋にしか見えてはいなかったのだ。

第4話 打ち明け話1

に続きます。

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