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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第四章 星波、日本にて

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第2話 悠(ゆう)


 悠は星波をエスコートしながら話す。魔素の充填された金のコンデンサは、悠が持ってくれている。相当な重さだろうに、悠はそれを感じさせない。きっと、外見から見るより力持ちなのだ。


 建物から出たら、外はかなり眩しい。青空が広がり、日光が肌を刺す。星波は、ダーカスより光の力が強いように感じられていた。

「これ、どうぞ」

 悠が差し出したサングラスを受け取って、星波は顔に掛けてみる。悠の持つサングラスへのイメージが、星波にその使い方を教えたのだ。


「あとでこちらの世界の服を買ったら、外国から遊びに来ている人という感じになるでしょう。そうなれば、サングラスもいらないと思います。ですが、今は他の人の興味を引く服装ですから……」

 やはり、言葉と同時にどう考えているかが伝わってくる。

 悠は、言うほど星波が着ているダーカスの服装は異様なものではないと感じているようだ。だが、季節感がそぐわないのはいかんともしがたいらしい。


 夏ということ自体は一緒のようなのだが、ダーカスの夜は肌寒いまでに冷え込む。夏でも長袖のチュニックは手放せない。しかもそれは、複雑な刺繍の入った厚手のフェルト製なのだ。

 こちらの夏の気候で、そんな長袖を着ている人などいないのだろう。


「人の記憶に残らないように、残っても特定されないように、ですね?」

「そういうことです」

 星波の問いに、悠は軽く答える。

 だが、それは手慣れているからではない。このような任務としてのエスコートは、悠にとって生まれて初めてのことのようなのだ。だから、どういう態度でいればいいのかがわからないというのが本音のようだ。


 そのまま無言で歩き続け、歩きながら周りを見渡して、星波は2つのことに驚いていた。

 道路は石畳にあらずして、なにかの一体のものでできている。だから、でこぼこが極めて少ない。先ほどの部屋の壁もそうだったが、もしかしたら石を溶かして成形するような技術がこちらにはあるのかもしれない。

 それから、イコモが群生しているのに驚いた。トーゴでも作られていたが、水田の規模が違いすぎる。たしか、イコモはこちらでは稲といったはずだ。ダーカスでは、イコモのまま呼ばれている野生種と、父の持ち込んだ日本の古い品種が作られていた。

 たしかに美味しいものだとは思うが、どうして父がそこまでこの稲にこだわるのか、星波にはわからない。だが、この規模で作られているということは、相当にこちらの世界の人たちはこの植物の種子が好きなのだろう。


「悠さんは、おいくつなんですか?」

 星波がそう声を掛けたのは、ダーカスとこちらでは歳のとり方が違うことを思い出したからだ。もしかしたら、悠は年下の可能性もあった。それだけ、こちらは歳のとり方が早いのだ。


「18です」

 そう返されて、星波は少し安心した。見た目のままと言ってもいいからだ。星波の2つ年上ということにはなるが、そもそも1年の長さが違うから、単純な比較はできない。それでも、余計な気遣いをしなくて済むのは助かる。


「……あの」

 さらに星波が話しかけるのを悠は遮った。

「着きました。ここです。

 どうぞ」

 大きな家だ。

 門扉を開けて悠が星波を招く。星波は、素直に悠に従った。

第3話 美岬みさき

に続きます。

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