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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第三章 電気工事士、がんばるぞ

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第31話 旅立ち


 2日も掛からなかった。

 1日と半分で書類は作られ、俺の書いた手紙も添えられて、本郷の奥さんの自宅に派遣されていった。

 次の便からは、送り先が本郷の奥さんの自宅ではなく、どこかの政府機関の一室になるんだろうな。


 ルーと星波(せな)は、着々と俺の世界に旅立つ準備を進めている。てか、一瞬で終わらせていた。女性の旅支度でも、持っていくものがほとんど無いってのは強いね。ルーですら公式の場で着るダーカスの正装と、前回のときに俺が買った服の数枚だけだったんだ。星波に至っては、服を2セットだけだ。

 すべてを行ってから買うってことで、その方が身元もバレないって考えなんだ。当座の生活のために俺のクレジットカードも持っていくけど、俺、暗証番号を忘れかけていたのにはびっくりした。


 まぁ、ダーカスでの食生活は、俺たちが持ち込んだ農産物の影響が大きい。だから、日本でも同じものが作れるし、ホームシックのとき用の「ダーカスの味」みたいなものを持っていく必要もない。

 それに、一度でもルーが日本に行ったことがあるっていうのが大きかった。肌感覚として日本の豊かさを知っているからね。知らなきゃ、不安からもっと荷物が増えていただろうな。


 むしろ俺の方が時間がかかっていた。

 俺が、なんの準備かって?

 ルーの両親と3人で生活することになるから、そりゃあもう必死だよ。使用人の女性たちに頼み込んで、一定の距離を保とうと頑張ったんだ。

 みんな、深々とうなずいて、俺のために頑張ってくれる約束をしてくれたよ。


 なんせ2人とも、異常なまでに「濃い」人たちだからね。冗談じゃなく、俺の地位がこの屋敷で使用人どころか、飼われているニワトリ以下になっちまいかねないんだ。ルーの両親は俺の屋敷に居候している身のはずなんだけど、偉そうという意味じゃ、王様ですら貫禄負けする夫婦なんだ。

 あの無茶苦茶な()()と、若〇規夫ボイスに逆らえる人なんかいねーんだよ。


 使用人の子たちだって、ダーカスの学校を出ていれば、今もそこの校長先生をやっているルーの父親みんな知っている。「校長先生あいさつ」で、威圧感に負けて泣いちゃう子だっていたそうだから、そりゃもうみんなよくわかっていて、本当に俺に協力的だったんだ。

 使用人の子たちにお願いしているときは、悪だくみしているみたいで楽しかったけど、ああ、なんて気が重い……。



 ともかく、公文書が整った翌々日、先方からの受け入れ回答が来て、ルーと星波は円形施設(キクラ)から旅立っていった。

 公式に持っていったのは、公文書と魔術師の服にくるまれた魔素が充填されたコンデンサ、金塊をいくつか。それから、外交文書を入れて召喚・派遣をするための羊皮紙でできた専用の封筒だけ。

 あとはルーの頭の中の知識だ。


 外交で儀礼上のやり取りで贈り物も必要らしいんだけど、それは金塊の数を増やすことで誤魔化すことにした。だって、ダーカスの工芸は、どうやっても日本の工芸には敵わないんだ。

 強いて言えば、金の鏡を磨く職人、パーラさんのものであれば日本の職人を超えるかもしれない。だけど、金の鏡なんて、普通は使わないよ。やっぱり色が乗らない鏡の方が王道だよね。

 それでもまぁ、無茶苦茶に純度の高い金だから、その時その時の金の価格以上に価値はあると思うんだ。



 それじゃ、俺は俺で、ダーカスでの人質役を頑張りましょうかねぇ。

 必要ならば、トプさんに拷問受けているみたいなでっち上げ写真だって、撮ってもらうってもんさ。

次話から新章に入ります。

再びこちらの世界です。

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