第29話 急所を突く
「なら、行く」
うん、それでこそうちの娘だ。興味をそそって、希少価値を演出してやればすぐに喰い付いてくる。なんか、釣りしているときみたいな駆け引きを感じるな。
「じゃ、星波、座りなさい。詳細を話そう。
俺のいた世界が、別の世界から攻撃を受けている。召喚や派遣ではない技術で通路ができて、そこから蒼貂熊というケダモノが続々と入ってきたそうだ。
俺の世界は、武器の使用が禁じられている。ケナンが行っても、剣の持ち歩きはできないんだ。そんな状況だから、学校に入り込んできた蒼貂熊に子どもが食われる事件まで起きている」
「なら、なんで武器の使用を解禁しないの?」
……こういうダイレクトな、オウム返しみたいな質問が一番怖いな。真っ直ぐな目でまっすぐ聞かれて、俺は一瞬絶句した。
「……まぁ、いろいろ問題があるんだろうな。
1つは、武器の威力がありすぎるからってのもあるかもしれない。銃を使えば蒼貂熊の退治は簡単だ。だけど、簡単すぎて、威力がありすぎて、いったん解禁したあと再度の禁止が難しくなるってのは想像がつく。
それに……。召喚や派遣ではない技術で異世界への通路ができるって、これはリゴスの魔法学院ですらできないことだし、俺のいた世界の科学技術でもできないことだ。つまり、敵は強大で、その敵に対してできることとできないことの境をはっきりと見せたくないってのもあるんだろうな」
「ふーん。
で、今回、ダーカスの王様が知らんぷりをしなかったのはなぜ?
父さんが来た世界だからって、わざわざこちら側の世界に危ない橋を渡らせないよね?
だって、王様はそういう人じゃないよね?」
キビしいなぁ。こういうとき、本当にこの子はルーに似たんだと思うよ。
「簡単に言えば、召喚や派遣ではない技術で異世界への通路ができるってなると、次はダーカスじゃないって保証がないからだ。今なら2つの世界が協力して敵にあたれる。でも、俺のいた世界が滅びてからじゃ、ここの世界が単独で戦うしかなくなる」
「なるほど。わかった。つまり、助けを求めてきたのは、向こうなのよね?
じゃ、最後の質問。なんで、このダーカスのあるこの世界のことが、父さんの世界にバレたの?
バレたから、助けを求めてきたんでしょ?」
……痛いこと聞くなあ。本当に、急所を突いてくるな。てか、急所しか突いてこないなぁ。
「……ダーカスの金を売って、その金で資材類を買っているのが、向こうの政府の機関にバレてた」
「……父さんのせいじゃん」
「ごめんなさい」
ぐさ。
そうだよ。俺が悪かったよ。謝っても仕方ないけど、謝って許してもらえるなら土下座でもなんでもするよ。
「よくも王様、怒らなかったね?」
「バレるリスクを冒しても、欲しい資材ばかりだったからだ。それに、こんな事態は想定できなかった。『いざとなったら召喚と派遣を止めちゃって、縁切りすればいい』って考えだったんだ」
「ふーん、そっか。最初からバレることも視野に入っていたんだね。さすが、王様。
じゃ、父さんの話だと、父さんの世界は戦う気まんまんで、それはぎりぎりまで隠しておきたいということなんだね?
つまり、不意打ちで勝とうって考えなんだ」
「そうなるな」
我が娘ながら、なんていい読みなんだ。
こんなことなら、もっと前から星波とは話をしておけばよかった。
でもさ、こう、あるだろ?
年頃の娘とは、話しづらいんだよ。こういう話題でもなきゃ、話しかけても黙殺されて終わりなんだからさ。
第30話 父さん、ウザいっ!
に続きます。




