第22話 ……しかたない
王様、見かねたのかそこでこう言ってくれた。
「本郷殿も、ルイーザのいう条件には合っておるぞ」
そう言われると、ますますルーしか適任者がいないのがわかる。王様だって、わかって言っているに違いない。
本郷はこの世界に滅茶苦茶詳しくなっているし、その実績はすごいものだ。トータルでこの世界を俯瞰する力もある。だけど、この世界の利益の代表となるとなったら、こちらの世界の人からの信任が必要になる。でも、さすがにそれは無理じゃないかな。奥さんをこちらに連れてくれば、人質っていう形は整うけどね。ただそれでも、整うという意味以上のものはない。
それに、本郷自身が魔法を使えるってこともないのが致命的だ。
「そもそもなのだが、そちらの世界の武器である銃というのは、魔法ではどうにもならないものなのか?
ケナンの剣ですら対抗できないとは聞くが、魔法の力場で防げればルイーザは安全ではないか」
……わかんないよ、大臣。
俺だって、テッポーなんか撃ったことないもん。てか、日本に生まれていたら、大部分の人が撃ったことなんかないんだよ。
「そうだな、火薬の威力を魔法で封じ込めることには成功したではないか」
王様もそう言って、俺はこの問題の本質を理解できた気がした。
王様が言っているのは、ネヒールの大岩を加工したときのことだ。魔法の力場で大岩を完成形の形に守り、その他の部分は火薬で吹き飛ばしちゃったんだ。そんな土木工事をやって、インフラを一瞬で作ったんだよ。
「我が王よ、それは無理というものです。
銃とは、鉛の弾丸を音よりも速く目標に当てる武器です。ケナンの剣よりもはるかに速く、町の外れのネヒールの大岩からここを攻撃できるのです。王のお言葉どおり魔法の力場でそれを防ぐことはできますが、問題はいつその弾丸を撃つかは敵の判断次第だということです。
いくらコンデンサによる魔素の供給があったとしても、すべての時間において魔法の力場を作動させ続けることは到底無理。力場が切れたら撃てばいいのですから、敵からしたら楽なことかと」
俺の言葉に、大臣が反論した。
「攻守それぞれの有利さの話はわかる。だが、からくりによる魔法の自動化ができているではないか」
と。
これには、ルーが反論した。
「魔法は目的語が必要です。つまり、力場を作るとすれば、その形のイメージをしてどう作るかを呪文に織り込む必要があるのです。生きて動いている人間を守る、それもどのような角度からでも、となるとイメージ魔法の達人であるデリンをもってしても荷が重いでしょう。
例を上げるなら、王宮を守るというのは大臣の言うとおり易しくとも、街に放した1羽のニワトリを守るのは極めて難しいか、と」
そうだよな。ニワトリに予測と外れた動きをされたら、なにもない空間を守ることになっちゃうもんな。
「ですが……。
双海と菊池にはそのようなノウハウもあるはずです。でなければ、そもそも『要人警護』という言葉があるんですから……」
まぁ、昔から映画とかでもいろいろ見たことあるし……。
これは事実だし……。
「ナルタキ殿。
ルイーザを大使としたくはなかったのではないか?」
「我が王よ。
したくないです。ルイーザは危険からは遠ざけておきたい。ですが、話せば話すほどルイーザしかいないのも事実……」
ここでもう、俺はなにも言えなくなった。ルーにしかできない。ルーならできる。ルーが行かなければ2つの世界が守れないかもしれない。でも行かせたくない。
俺は、そんな相反する考えで頭がぐるぐるして、胸がいっぱいだった。
でも……。
しかたないか……。
第23話 ダーカスの街
に続きます。




