第21話 俺はどうする?
俺、思わず立ち上がっていた。
「俺も行く」
「ダメです。ナルタキ殿にはこの世界にいてもらわないと」
ルーの返事はにべもない。
会議の席だからって、旦那である俺を「ナルタキ殿」呼ばわりするけど、それが切ないぞ。
「なんでだ?」
「本郷殿は死者扱いでも、ナルタキ殿まだ日本国籍持っているでしょ。ダーカスに人質を残しておくのが目的で、必要なことです」
「俺が人質? どういうこと?」
「そうです。ナルタキ殿は人質です。
外交の初期のときに、人質を交換するのは絶対必要なことです。私たちは娘もいる夫婦ではないですか。人質として等価交換ができるんですよ」
……ルーってば、実は王様を超えて一番辛口に物事を見ていたのかもしれない。だけど、そう説明されて「はいっ!」とか、良い子のお返事ができるはずがないだろっ!
それに、そもそも一代貴族とはいえ、そのお嬢様のルーと単なる電気工事士の俺、等価交換できるはずないしっ!
「だからって、なんで俺たちが……」
「では、ナルタキ殿、私じゃなかったら、他の誰を行かせたら良いと思いますか?」
「……えっ?」
「誰を行かせたら良いと思いますか?」
「……」
2度、聞くなよ。
そりゃあさ、俺だって頭をフル回転させて考えたよ。
だけど、代わりに誰をって考えたら、誰もいないんだよ。
ダーカスの政治体制を理解して、魔法も理解していて、こっちの世界全体の利益を代弁できる人ってなったら……。エモーリさんやスィナンさんたち技術者さんたちはちょっと違うだろ。ギルドのハヤットさんも違う感じだし、商会関係も違う。かといって、魔術師さんたちは重要すぎて、数日間ならともかく他の世界に派遣なんかできない。
強いて言えば王様だけど、王様を差し出すわけには行かないだろ。
王様が苦悩の表情で言った。
「余の息子であれば……」
「格としては十分以上ですが、実務としては?」
ルー、ばっさりと切って落としたな。聞こえていたら、あとから王子に睨まれるぞ。
……でも、そうなんだよな。
王子は優秀だし、人柄もいい。本当にいい子なんだよ。
だけど、いきなり外交の世界に差し出すのはちょっと違うんじゃないかな。なんせまだ高校生ぐらいだし。外交の世界で騙し合いをさせるより、今はまず勉強してもらわないと。
それに、王様の気持ちを考えたら、それはツラいだろ。
「そうです。王子にはまだ勉強していただかないとです。そうなると、心臓に毛が生えているルーぐらいがちょうどいいですからっ」
「……ナールーターキーどーのー?
今、なんと?」
「……いや、俺、なんも言ってないぞ」
あは、あはははは、ルー、目が怖いぞ。
適任、やっぱ、ルーしかいないな。でも、星波はどうなる?
人んちの子も大切だけど、うちの子も大切だぞ。
「……あのさ、星波はまだ、15歳にもなっていないんだぞ」
「ダーカスでなら、母がいなくてもあの子は育ちます。あの子はもう大丈夫」
「そうかなぁ?
まだまだ子どもだぞ?」
しっかりしている子ではあると思うよ。でも、父娘2人きりでいて、洗濯物はまぁ屋敷の使用人さんたちがやってくれるからいいけど、それ以外でみんなツンケンされたら泣いちゃうよ、俺。
「大抵のことにいい加減なのに、娘については慎重になるんですね?」
「一言多いぞ。それに、俺だって父親だし」
「なんだ、自覚があったんですね」
「あ、あるよ、それくらいっ!」
「くらい?」
「上げ足取るなよっ!」
「控えよ、御前であるぞっ!」
うるせーよ、大臣。
ひとんちの夫婦喧嘩に口を出すな。
第22話 ……しかたない
に続きますが、ネタバレ的題ですねw




