第16話 王の判断
そこで、ルーが深刻な声で聞いてきた。
「もちろん、最終的に判断するのは双海殿と菊池殿ではないと思いますが、今の話のような前提を考えれば、その2人のような存在が用意されていなければ逆におかしいのではないでしょうか?」
……えっ、どういうこと?
あえてその語調で言うってルー、それはなんか意味があるん? なにが言いたいんだよ? そんな声、今まで数えるほどしか聞いたことがないぞ。
「ルー、そなた、覚悟はあるのか?」
王様はなぜかルーにそんな質問をした。
「娘のセナはもう、独りで生きていけますから」
「えっ、まだまだ星波は子どもだし……」
思わず俺がそう言うのに、ルーは被せてきた。
「ナルタキ殿!」
と。
「わ、わかったよ」
俺はそう言って黙る。こういうときのルーに逆らっちゃいけないことくらい、俺だってわかる。なんせ長い付き合いだもんね。
間違いなく王様も、不退転だってわかっている。災厄ではないけどね。
そこで王様、声を張り上げた。
「大臣を呼べ。急ぎだ」
「はっ」
ドアのすぐ外からトプさんの声が聞こえた。
トプさんはもう、それなりに偉い立場だ。だって、ダーカスとエディの国家間の力関係を、1人で塗り替えた英雄だからね。御前会議にも軍代表として出てくるくらいだ。
だけど、まぁ、軍と行っても王様の近衛隊ぐらいの規模しかないし、それもあって少しでも時間があれば、自分で王様の身を守るって頑張っているんだ。だから、基本的には、トプさんの鉄壁のガードを突破しないと王様には近づけない。
まぁ、ケナンさんとトプさんが、ダーカスの最強の双璧だからね。
それから3分と掛からず、すぐに小走りの足音が近づいてきて、ドアが開いた。
大臣が肩で息をしている。走ったのは久しぶりなのかもしれない。
「大臣。御前会議の結論を変えねばならぬ。
王権法に則り、王と大臣、それから閣僚もう一人の同意をもって即時結論を変える。百人評議会には、こちらの案で諮ってもらおう。その場で否決されぬよう、改めてエモーリとスィナンには根回ししておけ。石工組合長のシュッテ、ギルド地区長のハヤット、ヤヒウ飼い長のインティヤール、商人組合長のティカレットにもだ」
「もう一人の閣僚は、『始原の大魔導師』殿をもって充てるのですね?」
「そうだ」
王様の答えに、大臣の顔が、近年見たことがなかったほど引き締まった。
「では、変更内容をお聞きしましょう」
大臣は王様の個人机の上から紙を1枚失敬して、ペンまで机から持ち出してメモの用意にした。
ま、大臣は王様の従兄弟だからってのもあって、このくらいは平気でやるよね。でも、これでいいと俺も思うんだ。
「軍事同盟が必要なのだよ、通商条約ではなく、な」
「……『軍事同盟が必要とされている』、のではないのですか?」
「余が、ダーカスが必要と判断した。先方が必要とするから結ぶのではない」
「それはなぜでしょうか」
「双海と菊池を救わねばならぬ」
「……」
大臣は黙って、王様の次の言葉を促した。
「おそらく、今時点で双海と菊池の功はほぼない。だが、ここで双海と菊池の発言力を上げておかねばならぬ」
「どういうことでしょうか?」
重ねて大臣が聞いた。
いいぞ、大臣。俺もわかんなかったから、聞いてくれて助かったよ。
第17話 王命の根拠
に続きます。




