第15話 王の推理
俺の必死とも言える返答に、「だろうな」と王様は応えた。
「双海と菊池の苦労もわかろうというものよ。
おそらくはこのなにもできぬということすら、敵を欺く策としておろう。
……だが、知らされていない国民は敵に回ろうな」
ん?
どういうこと?
王様は、言葉を続けてくれた。
「ある程度自由に策を描ける裁量を与えらた者がおらねば、戦いなどできぬ。また、戦いである以上、敵を欺くには味方からとなる部分がどうしてもあろう。
だが、ナルタキ殿。そちらの国の民主主義という方法論とこのような戦の常道、極めて相性が悪いとは思わぬか?」
……そうですね、そのとおりです。
民主主義って、情報公開が基本だもんな。
こういう方法で敵と戦うけどそれでいいでしょうかっていうのは、実は外に出せない情報だ。敵に知られちゃならないんだからね。だけど、情報を外に出せない場合、勝つために情報を出さない、出せない担当者が無能だと吊し上げを食らうことになる。
で、施政者がその吊し上げを食った担当を馘首にしたら、戦争に負けることが確定する。
もちろん、好き勝手するために情報を隠すのはよくない。
だけど、制度としてのこのあたりのバランス、極めて難しいものだとは思うよ。
俺の経験上だって、ダーカスとサフラの戦争、戦後処理は王様が考え抜いてくれたけど、戦いそのものを先導したのは俺とルーだった。
ルーに至っては、ハッタリ1つで敵の魔術師集団を壊滅させちゃったんだ。だけど、こんなのその場の機転だったし、いちいちお伺いを立てなきゃいけないルールだったら、こんなの実行できなかった。やっぱりいくらかは現場に任せてもらわないと。
でも、それが俺の育った国ではどれだけ難しいか、それもわかっているつもりではいる。
王様、俺が頷くのを見て、さらに言葉を重ねた。
「蒼貂熊を送り込んでくる敵に本気で対処する証しとして、今までの国の姿勢を変える明言された『軍事同盟』を結ぶのだとすれば、その相手はダーカスだけではないだろうな。そちらの世界のすべての国とも結ぶ気であろう。また逆にそうせねば、国を保てぬところまで追い込まれているのではないかな。
その一方でそちらの国の状況を考えれば、最初に『軍事同盟』を結ぶ相手としてダーカス以上の相手はおるまいよ」
「御意」
俺とルーの口から、そんな同意の言葉が自然に漏れた。
王様、やっぱりアンタ、スゲーよ。
「安全保障」を超えて「軍事同盟」を結ぶなんてなったら、その言葉だけで拒絶反応も起こす人も多いだろう。だけど、現実の脅威で子供たちが学校で喰われているという事実は動かない。これを防いで異世界と戦うのに、世界は人類あげての「軍事同盟」が必要だし、さらには異世界とだって結ぼうとするだろうさ。
となれば、一番の被害国が難色を示していたら……。
それを避けるために、まずは歴史的経緯が皆無の異世界の国と同盟を結んでみせるってのは、方法論としてアリだよな。
地球上の具体的などこかの国と違って、受け入れてもらえる可能性が高いって、俺でも思うもん。王様に言われてみれば、ね。
「我が王よ、一度も行ったことがない国に対してのこのご賢察……」
「我が友よ、みなまで言うな。そもそもナルタキ殿が世界周遊を経験させてくれたからこそ、余は他の国々を見ることができ、見聞を広められたのではないか」
お、王様っ、ありがたいお言葉ですぅ。
第16話 王の判断
に続きます。
実は第15話 王の判断
だったんですが、延びてしまいました。ごめんなさい。




