第14話 戦争の準備
俺だって、こちら世界で戦争を体験している。ダーカスの北側、サフラの国がこの世界が復興するのにあたって、攻め込んできたんだ。
魔素流がこの世界を焼き尽くすのを、俺たちは止めた。
魔素流はこの惑星の2つの月、セフィロトとスノートの間に流れる天体現象だ。だから、2つの月が同時に見えているときは安全だし、北極や南極に魔素流が降ることもない。地上に降るときですら、きちんと円形施設で誘導できて地面深くまでアースできれば、周囲まで焼かれることはないんだ。
俺は、その円形施設による誘導ネットワークを再建しただけなんだよ。
その結果、土地は焼かれなくなり、農地が増え、木々も植えられていった。そうなると、高緯度の魔素流で焼かれていなかった国は、資源を高く売ることができなくなるのが確定した。それに元々、極地での生産量が多かったはずがない。高い値付けができたからやっていけていたんだ。
で、魔素流さえなければ、南の国の方が林業や農業の生産に有利なのだから、なにが起きるかって、もう自明のことだったんだよな。
ジリ貧に窮する前に、こちらの支配をしておこうとサフラの国が攻めてきた。だから、ルーと魔術師さんたち、それから俺はゴ◯ラとガ×ラの夢の共演をやって、戦死者を出さずに戦争に勝った。
そして、王様が苦労したのは戦争をどう終わらせるか、終わらせてからどういう世界にするかだった。サフラの国が将来もずっと貧乏なままだったら、また攻めてくるもん。
だから、王様、周りの国との共同での経済対策を考えたんだ。
その王様が、「ナルタキ殿の育った国、他の国からの扱いが変わってきているのではないか?」と言うんだから、その言葉は重いんだよ。
王様は続ける。
「蒼貂熊を送り込んでくる敵との戦いで、ナルタキ殿の育った国が矢面に立たされているのはたまたまということだ。
だが話によれば、蒼貂熊とさえ、戦う手段は持っていてもなかなかにそれを使えぬようではないか。
その自縄自縛、他の国から見たらどう見えるだろうか?」
つまり、そういうことだよな。
戦争は当事国だけの問題じゃない。いかに味方をたくさん作るかも大切なんだ。戦争の準備ってのは、そういうこともあるんだ。
まして、戦争っていうといろいろな考えの人がいて揉める。だけど、今回は少し事情が異なる。だって、人類同士の争いじゃない。人類と異世界の総力戦なんだ。それも、向こう側は会話すら拒否して、殲滅戦を仕掛けてきている。
人類すべてを味方にできる戦いのはずなんだ。
俺の育った国は最前線に立たされていて、他の国もみんな、次は自分の国だと思っている。だから当然のように援助も申し出てくれているはずだ。なのに、当事者がひたすらうだうだとなにもしなかったら……。
地球上の国同士の戦いじゃないんだから、いい加減割り切ってくれって、他の国は絶対いらいらしているよ。いかに味方をたくさん作るかが大切なのに、これじゃ見捨てられてしまう。
となれば、もう日本に主権を持たしてはおけないっていう話だって出てくるかもしれない。双海と菊池はそんな外国のことも考えなきゃならないんだ。
「余は、ナルタキ殿の育った国が、敵と戦う姿勢を内外に明らかにするときが近いと見た。
子供たちが襲われているのに、なにもできないとなれば、それはもはや国家とは呼べぬからな」
「さすがにそんなことはないと思います」
俺はもう、ダーカスの人間だ。ここでルーと結婚し、娘もいる。だけど、日本のことも弁護せずにはいられなかったんだ。
第15話 王の判断
に続きます。




