第13話 お役所の仕事
「それに……。
本郷の奥さんの話だと、双海と菊池は警察官とか自衛官とかではないみたいとのことでしたから……。
おまけに、こちらに送ってきた外交文書を一存で出せるとなると、どういう存在になっているのか想像もつきません」
俺の言葉に、王様はちょっと怪訝な顔になった。
「余が大臣に命ずれば、トプが同じように仕事をするぞ」
「向こうは、いろいろと細分化されてまして……。
判断できる立場の公務員って、案外少ないんですよ」
ま、俺も建築業界の端っこにいたからね。土地の取得から建築確認に至るまで、法律手続きのなんやかんやの苦労話は耳にしていた。
実際、最初に話があってから工事に携われるまで最短で半年は掛かっていたし、長くては5年近いなんてこともあった。これ、なんとか法の許可とか、なんとか法の容認とか、一つ一つ無茶苦茶時間が掛かって……。
で、担当部署が全部違うっていうんだ。最初は腹も立ったけど、土地の売買関係と下水管をつなげるのが同じ窓口じゃできないのもわかりはするんだ。
しかも、外交だの戦争だのって話だとしたら、手続きはわからないけど国会の決議だって必要なんじゃないのかな?
で、今回の双海と菊池は、そんなことをやっているように見える。捜査から公文書を出すまでを全部判断できる立場って、そんなのお役所には存在しないポストのはずだ。カッコいい言葉で言えば、超法規的存在ってヤツだ。なんかの映画で見たぞ。
そんなこと思っていたら、さらにいろいろ思い出したり、考えることが出てきた。
そもそもだけど、俺が育った日本という国は、戦争なんてできたんだろうか?
考えてみれば、「公式の軍事同盟の締結」ってなんなんだよ?
もっとこう、なんていうのかな……。そうだ、「安全保障条約」とか、もっともっとオブラートに包んだ言い方をするんじゃなかったっけ?
「すみません。
ちょっと双海と菊池については、またおいおい思い出したことを伝えようと思います。ですが、それよりもっとお伝えしとかないといけないことが……」
「なにか?」
王様の質問に答えて、俺は自分の育った国について話した。「公式の軍事同盟の締結」ってのが、他の国では当たり前のことでも、いかに異常事態なのか、もだ。
俺の言葉に、王様は深々とため息をついた。どうやら、なにかを考えつき、それがあまりいいことでないってことだ。
「ナルタキ殿。
今のその異常事態であるという判断、これは本郷殿でも同じ判断をされるかな?」
「本郷だったら、俺より早く気がついていたでしょう」
「やはり、な……」
そんなに早くは気がつけないよ、俺は。
その2回目の深々としたため息は、なんなんだよ?
「……2つ考えられる」
王様はそう言うと、そのまま説明してくれた。
「いかにナルタキ殿の故郷が危うい状況なのか、双海はナルタキ殿になんとしても伝えたかった」
うーん、別にそんな言い方しなくっても、俺にだって危うい状況ってのはわかるよ。
俺の不審な顔に、王様は2つ目の考えを話してくれた。
「ナルタキ殿の育った国、他の国からの扱いが変わってきているのではないか?」
「どういうことでしょうか?」
「蒼貂熊、他の国には出ていないのであろう?」
……あっ!
そういうこと?
第14話 戦争の準備
に続きます。




