第10話 魔素を落とす素材
「『始元の大魔導師』さまがこちらに来て間もない頃の話でございます」
ルーはそう説明を始めた。
あ、なんの話するかわかったけど、この話、王様たちは知っていたのかな?
ギルドのダーカス支部のハヤットさん、冒険者が恥をさらしかねないことには口が固いもんな。
「当時のケナンは、シルバークラスの冒険者でした。ダーカスに来て、『始元の大魔導師』さまのお力に疑いを抱き、戦いを挑まれたのです」
うん、そのケナンさんも今やエフスの街の町長……、ってより知事になっているからね。街の規模が桁違いに大きくなったから、敬語も使われているよ。
でもって、当時の冒険者の最高レベルはシルバークラスだった。だってこの世界、金は無価値だったから、最高のものをゴールドでは絶対に例えなかったんだ。
「話は聞いている。
ケナンの妻のセリンが、『始元の大魔導師』によって昏倒されられたのだったな」
お、やっぱり王様知っているよね。当時、セリンさんはパーティーの魔法使いだったんだ。
って、これ、ルーが話したんじゃない?
あの頃のルーは、王様直属の「聞き耳頭巾」役もやっていたからね。
ただ、ここで話すのには、こう切り出した方がこの話を知らなかった人も理解しやすいよね。これでいて、王様もルーもけっこうな気遣いの人なんだ。
「はい。セリンは、『始元の大魔導師』さまをカエルに変えようと、変化の魔法の呪文を唱えたのです。最後に『始元の大魔導師』さまの名、『ナルタキ』で呪文の術式を終える瞬間に、体内で励起した魔素をショートさせられて、体内の魔素のすべてを失って倒れました」
うんうん、あったねぇ、そんなこと。
「異世界への通路も、魔素によって形作られるものだとしたら、同じ手段で消滅させられるはずです。あくまで対処法にとどまるので、すぐに次の通路を作られるでしょうが……」
なるほど。
あ、それで『魔術師の服』か。
「『魔術師の服』の繊維で網を作り、上から被せればどんな魔法でも魔素がショートして効力を失うはず。魔法学院でも、『魔術師の服』の複製はできませんでした。ですが、『始元の大魔導師』さまの世界の技を前提とするならば……」
ルーの具体的な補足で、みんなすぐに理解したみたいだ。
『魔術師の服』は、アースを取るのと同じ原理で魔素を地面に落として無効化してしまう。この世界で最大の魔素の流れである、この惑星の2つの月、セフィロトもスノートに掛かる魔素の架け橋によってすら、『魔術師の服』を着ていれば焼かれることはないんだ。
それで俺の世界の通路も……、いや、でもすぐにまたその隣に作られるかもしれないんだよな。これじゃ、いたちごっこじゃないか。
よほど使いどころを考えないと、まったく意味がないよ。でも、やられっぱなしからのいたちごっこは、事態の好転と言える……、のか?
「よし。
本郷殿の奥方は、もう先方に『魔術師の服』について話しておろうな?
本郷殿と歳の差が開かぬよう、こちらの魔素を含みし回復の泉の水を送っているし、その際にも『魔術師の服』は使っている」
「それ、もう知っていると思った方がいいです。そういうのに、俺の世界は絶対抜け目がありませんし、双海と菊池はきっと人から話を聞き出すプロになっています。本郷の奥さんが、隠そうとしたことほど聞き出されているでしょう」
もうね、今までの話だけでも、双海と菊池が間抜けってことだけは絶対ないって気がしたんだ。
第11話 王命果たすべし
に続きます。




