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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第三章 電気工事士、がんばるぞ

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第9話 魔術師の服


 俺は提案する。

「『魔術師の服』を複製してもらいましょう。俺の元いた世界であれば、きっと簡単にできる。で、それが大量にあれば、蒼貂熊(アオクズリ)にバレずに魔素を貯めたコンデンサを大量に保持できます」

「簡単って……。

 ナルタキ殿、本郷殿の技を持ってしても、『魔術師の服』の複製はできなかったではないか。これは容易にどうこうできることではあるまい」

 大臣が顔色を変えて俺に言った。


 ……大臣さぁ。

 俺も本郷も電気工事士なんだぜ。分析化学とか、そっからの再合成とか、研究機関のようなことはできっこないだろ。

「いや、工業力と分析力が私たちに足らないだけです。私の世界の技術であれば、魔術師の服の複製は一瞬で成るでしょう。分析の力も……。たとえば、学校にある顕微鏡はせいぜい1000倍しか拡大できませんが、私の世界であれば数十万倍は軽く拡大します。服の繊維がなにでできているのかも、あっという間に解析することができます。どれほど微量のものが入っていても見逃しません。知ることが科学技術の基礎ですから、そちら系の技術はすごいんです」

 そーなんだよ。

 電子顕微鏡が、素人にも扱えるもんだったら買ってたよ。でも、予想外に価格が高かったのと、扱いだけじゃなくメンテまでが難しかったんで諦めたんだ。だいたい、顕微鏡に真空ポンプってなんなんだよ。

 まぁ、あと10年もすれば、こっちでも扱える人材が育つとは思うんだけどね。


「なるほど。それはいい。

 こちらの世界としても、『魔術師の服』はあればあるだけいい。いにしえに円形施設(キクラ)にあった法具が『魔術師の服』と同じ材を使われていたというのも『始元の大魔導師』さまの発見でした。その再現もできるやもしれませぬ」

 おお、そうだよね、ヴューユさん。


「『魔術師の服』を使い、魔素を隠し通せば、先方が軍事同盟と決めつけて無条件に攻め込んでくる可能性が減ると、『始元の大魔導師』は仰るので?」

 あ、大臣が話を戻した。うん、そういう話をしていたんだもんな。

 でも、俺、そういう話じゃなくて横道に逸れただけなんだけど。


「大臣、その前に、私の話がまだ終わっておりませぬ」

 そこでルーが話を取り返す。

「我が王と大臣の懸念は、どう手を打っておけば、こちらの世界が攻め込まれないかということ。ナルタキ殿と私の提案はそれに沿うものでしたが、いつまでも言い逃れはできますまい。問題は根本から絶たないと」

「ルイーザ、そなたのいう根本とはなんじゃ?」

 改めて聞いたのは、王様だ。


「異世界との通路を完全に遮断しうる技、それに尽きます」

「だが、それは魔法学院の力をもってしても難しいのではなかったか?」

 そうだよね、

 ヴューユさんは、そう言っていた。


「異世界との通路を作らせないということであれば、これは至難の技。どうすればいいのかまったく思いつきませぬ。筆頭魔術師殿も、『開けられぬものは閉められません』と申しました。つまりは、そのための魔素を扱う技術が必要ということです。ですが、私が申し上げるのは、あくまで対処方法に過ぎず、通路は遮断できても新たに敵が作ってくる通路そのものを防ぐことはできません。常に後追いなのです。ですが、敵の本体の侵入は防げましょう」

「それでよい。それでも大きな効果がある。

 で、どうやるというのだ?」

 王様の高い声が響いた。

第10話 魔素を落とす素材

に続きます。

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