第8話 ルーの案
ルーは説明を続ける。
「まずは、今回、3つ目の世界が明らかになりました。今後、4つ目、5つ目も有り得る前提での話となります。
召喚、派遣は魔素の痕跡を残さぬよう、極秘に行うのが第一歩。それだけで、我々の存在がナルタキ度の世界に入り込みし敵に知られる可能性は大きく減りましょう。本郷殿の奥方とのやり取りも、決して悟られてはなりませぬ」
「保険は4つ目、5つ目に対して掛け、そこからどう見えるかを今から考えておくというわけじゃな」
「御意」
王様の言葉に同意して、ルーはさらに続ける。
「こちらから出せる魔素の知識ですが、先方が理解できる範囲で無制限にすべて出す必要があると考えます。これには2つの理由があります。
1つ目、ナルタキ殿は、ナルタキ殿の世界で受けた教育によって、魔素の動きをすぐに理解されました。つまり隠しても意味がないかと。
2つ目は、そもそもこちらが知識の出し惜しみをしてナルタキ殿の世界が戦さに負けたら、話はすべて終わります。すべては勝った上でのこと」
「それもわかる。だが、問題はその先ぞ」
そう、そのとーりだ。
今のところ、ルーの話は「前提」なんだ。
「その上で、ですが、ナルタキ殿の世界に魔素はありません。となれば技術を教えること、そのまま魔素の充填をしたコンデンサの輸出協定と同義です」
「なるほど、わかったぞ。軍事同盟ではなく、通商協定に形を整えておけと」
「そのとおりでございます、我が王よ」
……意味わかんない。
なんでみんなそれで納得しているんだよ?
「だが、すぐに思いつく問題がある。相手はナルタキ殿の世界にいきなり攻め込んできた。いくら内密に運び込んだとて必ずバレる。こちらが商売だと言っても、先方が軍事同盟と決めつけて無条件に攻め込んでくる可能性は否定できぬぞ」
と、これは大臣。
これを聞いて俺、始めてルーの言いたいことを完全に理解した。
なるほど、なるほど、なるほどなぁ。
魔素の充填をしたコンデンサの輸出を厳密に管理することによって、無制限の軍事援助ではないと強弁するつもりなんだ。あくまで見返りを得ての輸出、すなわち経済活動だってね。
で、そんな取り決めをしたとしても、まるっと全部無視してこちらに攻めかかってくるかもしれないよって、大臣は心配している。
「幸いなことに、コンデンサは『魔術師の服』に包まねば、召喚、派遣の際に魔素が抜けてしまいます。そして、『魔術師の服』はそう何枚もない。他のものは管理できぬとも、『魔術師の服』さえ管理すれば、魔素の輸出は安全に記録に残していくことができましょう。
大臣の心配はあとで話すにせよ、とりあえず形は整えられます」
「……その『魔術師の服』なんだけど」
ルーの言葉を聞いているうちに、俺は思いついたことがある。
「魔素の検知って、魔術師さんたちはみんなできますよね。満タンのコンデンサか、空のコンデンサかは、遠くからでもわかる、と。
で、これ、『魔術師の服』で包んだコンデンサでもわかるんですか?」
「わかりませんね。『魔術師の服』の中の魔素は見通すことができません」
ヴューユさんの言葉に俺はうんうんと頷いていた。
第9話 魔術師の服
に続きます。




