第7話 回答期限
王様は肩をそびやかして言う。うん、高い声でも、こうすると威厳が出るなぁ。
「勝てない相手と結ぶとは言っておらぬぞ。
どっちが恩を高く売れる相手か考えてみよ、と言っておるのだ。
自らの力で勝てると思っている者に助力など申し出ても、次の標的にされるが関の山。だが、不利なときに助けおうた仲は、先々まで裏切りとは無縁ぞ」
ああ、なるほど。
尻馬に乗って同盟したって大切にされないってのは、戦国時代にも良くあったことだったな。歴史の授業で教わった、親藩とか譜代とか外様とかのことだよね。先行き不透明な時代からずっと味方だったら、当然のように大切にされるんだもんな。
「それに、ナルタキ殿の世界からの書簡には、ナルタキ殿の世界の武装についてはまったく書いてはおらぬ。これを無力と取るは、あまりに早計であろう。地上に太陽を呼ぶ技術と、こちらの魔素の技術を混ぜ合わせたら、どのような新たな技が生まれるか想像もつかぬ。だが、片やどれほど超越していたとしても、敵が持つは所詮魔素の技術なのではないか。
となれば、いつかは自力で得られよう技であろうし、それを得たとても先々での爆発的発展は望めぬ」
なるほど、納得です、王様。
「それにな、武装について書かぬは、脅しに読めぬように礼を尽くしたものかと余は思う。書かれずとも、私たちはナルタキ殿から聞くことができるからの。それも相手は良くわかっているはず。
それに対し、ナルタキ殿の世界に攻め込んだ敵のやり口は、奇襲といってよい。礼のかけらもない。話の通じぬ敵であれば、恒久的和平は無理であろう」
おおお、王様、ありがとうございますですぅ。
これで元いた、生まれ育った世界に顔向けができます。まぁ、いじめられもしなかったけど、いい思いもたいしてなかった世界だったけど、それでも俺を作ってくれた世界だもんね。
「それはわかりました。王の判断は良しとして……」
「だからといって、ナルタキ殿の世界に与しすぎるのは良くないと?」
大臣が再び王様に話しかけたけど、王様はそれを遮るようにして逆に聞き返した。
「なんらかの保険は、掛けておいた方が良いと臣は思います。与すこと自体については、どうこう言うつもりはありませぬ」
大臣の返答は、それはそれで俺にも納得できるものだった。「保険」ってのは、俺の世界から得た知識と制度なんだけどね。
俺のいた世界に味方してもらえるのはありがたい。だけど、それでこの世界が滅びるのは俺だって避けたい。申し訳なさすぎるもんね。
王様、ちょっとの間考えて、再び大臣に聞いた。
「ところで、回答はいつまでだったかな?」
「10日の間と」
「では、まずは筆頭魔術師殿の案による返答を、次の便で送れるようにしておけ。その答えが来なければ、こちらとしても返答ができぬ、としてな。その返答を待つ間に、大臣の懸念を拭えるような材料はあるか?」
王様の問いに答えたのはルーだった。
「今の我々にできることは少なく、逆にそれがゆえに手は決まってしまっています」
ルーの言葉に、王様は前かがみになった。
「聞こうではないか。ルイーザの考えを」
「まずは大臣の懸念、完全なる払拭は無理かと。なぜなら。交渉ができぬ相手とは、そもそも取引ができませぬ。その上での保険の話となります」
「それは当然のことだな」
みんなも頷いたけど、ルーの話はまだまだ前提だな。
第8話 ルーの案
に続きます。




