第6話 軍事同盟
ヴューユさんは言う。
「魔素技術を形にしたものと一緒に、その人材も一緒に召喚してしまえばよいのです。召喚と派遣は、魔術師と円形施設がなければできぬもの。魔術師本人が、自らを召喚、派遣することは能わず。なので連れ込んでしまえば、こちらで好きに扱えます。本物であっても、偽物であってもね。
ナルタキ殿の世界に入り込みし、蒼貂熊を送り込んでくる敵は、円形施設に依らずとも召喚、派遣ができるようです。ですが、それができればナルタキ殿の世界は助けを求めては来なかったでしょう」
そりゃそーだ。まったくそのとーりだ。
俺たちがいた世界では、そういうのは「ワープ」とか言われて、科学技術の範囲で描かれたりする。あくまで、そこの範囲で議論されるものなんだ。
魔法で転移するなんてのは、描かれても本当におとぎ話だ。最初から実現のための考察すらされることはない。それができる敵が来たから、なりふり構わず助けを求めているんだよな。
「そもそもとしてどれほどの科学の技を持とうとも、魔素がろくに無きところでは限界があったはず。魔素の技術にはなりえませぬ。ですが、こちらには国を動かすほどの無尽蔵の魔素があるのです。ナルタキ殿の世界で特異な人間派遣されてきたとしても、1人2人なら恐るるに足らず」
……そんなことになったら、召喚されちゃった詐欺師に同情しちゃうよ。
例えばだけど、動きを止めるハルトの呪文をかけられたときの情けなさったら、そりゃあもう、ねぇ。目の前で言いたい放題言われているのに、指先1つ動かせないんだから。
こちらの世界は、農業の基本が畜産だ。俺がこっちに来たときは、肉と乳と芋しか無いと言っていい状態だった。だから、毛刈りや搾乳のときに家畜を動かさないための技術として、ハルトの呪文も生まれたんだ。
今はもう、野菜も米も香辛料もあるんだけどね。でも、とうもろこしとか、最初は不気味がられて食べてもらうのは大変だったんだ。
「で、それからは?」
ルーがヴューユさんにさらに先を促した。
「……ナルタキ殿のいる前では誠に言い難きことながら。
召喚されてきた方を見て、ナルタキ殿の世界が戦いきれぬとなれば、蒼貂熊を送り込んでくる側と組むことも考えておかねばなりますまい。今の時点で我々は中立であり、わざわざ強い敵を作る必然はないのですから」
あ、ヒドい。
それはヒドいなぁ。
わかるけどさ、それでもヒドいよ。
まぁ、わかっている。ヴューユさんは、いつだって言いにくいことを率先して言う人なんだ。誰も言わないと、議論が深まらないからね。で、さらに言うなら、コレ、ヴューユさんがそうしたいというわけじゃないんだ。筆頭魔術師としての責務で言っているんだよ。
大臣はいい人すぎて、こういうのは言えないからね。
で、さっそく王様が反論してくれた。
「トプが言ったではないか。『ナルタキ殿の世界に攻め入りし敵が、いつの日にかこちらに入ってこぬ保証はありませぬ』と。なら、軍事同盟を組む相手は言葉が通じる者にすべきではないか?」
「しかし、ナルタキ殿の世界が負けたら、次は我々です……」
「だからよいのじゃ。
軍事同盟とは、不利な方と結ぶは必然」
「有利な方とではなく?」
この質問は大臣からだ。
うん、大臣が聞いてなかったら、俺が聞いていたよ。
第7話 回答期限
に続きます。




