第5話 詐欺師対策?
筆頭魔術師のヴューユさんの、「貴世界の魔素技術を形にしたものを見せて欲しい」という返答は、無茶なものがある。そもそも俺のいた世界は科学技術で成り立っている。魔法なんか無いと言っていい。
それに……。
「こちらの世界に対し、要らぬ疑いを呼ぶことにはならぬか?」
そうです。王様、俺もソレ思いましたよ。
「魔素の知識を与えるにあり、現状としてどこまで人材がいるのか、その人材がどこまで理解しているのかがわからなければ、説明のしようもないし伝えられる相手もいないではないかと伝えるのです。実際、魔素を感じられぬ者になにを教えろと?
先方は魔素技術という見返りが欲しいのですから、自らの持っている技術の少なくとも8割程度は出してくることになるでしょう。今のナルタキ殿の話のとおりならば、まったくのゼロということはないはず。
ともあれ今は、どれだけの情報を得られるかが重要。そして、その情報をもたらす者がどういう者かを知ることが必須。そのためには、この手段が最適。これが我が言いたきこと」
「でもそれ、伝説の錬金術を今もやっている人がいるかって話になりますよね。
さすがにソレ、厳しくないかな?」
俺の質問に、ヴューユさんは答えてくれた。
「あくまで技術移転の準備として、ただ単に、そのようなものがあるかを聞くだけです。実害はない」
「なるほど。これで、魔素のコンデンサでも出てくれば、向こうは言い訳もできぬな」
あー、大臣、そんなものはないって、俺、断言できるけどね。……あ、1ペアだけはあるな。俺が売ったやつ。でもあれはどっかのオーディオマニアが喜んで使っているから、出てくるはずはないんだけどね。
でも、ま、それで俺の世界への疑いが晴れるなら、いいことなんじゃないかな。
で、なんでヴューユさんはそんな疑いを抱いたのかな?
「そもそも、魔素がわかるなんて人が1人もいない可能性もあるんですけど……」
「魔素がどれほど薄くても、人間の身体には宿るもの。ゆえに、ルイーザ殿の言うとおり、ナルタキ殿の世界が相手とて軽挙な判断と行動はできません。また、魔素への知識がなかったとすれば、蒼貂熊についてもわからなかったはずではないでしょうか。
ナルタキ殿の世界は、相当に注意深く魔素の技術を隠しているものと見えます。ゆえに、それが明らかになるとき、ナルタキ殿の世界の文化、人の考え方、すべてがあからさまになるでしょう」
……それはそーかもしれないけれど。確かにそのとーりなんだけど。
でも、あるのか?
生まれ育った日本にそんなもん……。
で、俺もあからさまって言うけどさ。本物が送り込まれてくるかの方が不安だよ。怪しい手品師とか、カウンセリングの得意な占い師のなんとか先生とかが来ちゃったらどうしたらいいんだろ?
問題が変なふうに複雑化しちゃうかもしれないじゃん。ヤだかんね、俺の世界が詐欺師ばっかと思われるの。なんか言っとかなきゃ。
「詐欺師が偉そうなこと言ったらどうします?
俺のいた世界、魔素が少なすぎて魔法とか超能力とか、確実じゃないんですよね。こっちみたいに、治癒魔法ですぐ治るから詐欺のしようがないってのとは違うんです。だから、悪いヤツもいるんで……」
ごにょごにょ。
こういうのって、つくづく言いにくいなぁ。自分の故郷を悪くは言いたくないんだよ。だけど、こと魔素に関して言えば、俺のいた世界では怪しい話以外のなにものでもない。どうしたって、不穏になっちゃうんだよ。
第6話 軍事同盟
に続きます。




