第4話 筆頭魔術師殿の考え
それでもルーは、俺の言いたいことを整理して代弁してくれた。
「つまり、ナルタキ殿はこう言いたいわけですね。
今、ナルタキ殿の世界が危機に瀕しているのは、蒼貂熊という化け物がいて、その化け物が魔素を集めるために子どもを狩っているからだ、と。
昔、同じことをしようとした人間もいたけど、あまりの非道さに処刑されてしまった。つまり、現在ではそんなことができるわけがない、と」
うんうん、そういうことだよ。まとめてくれて、ありがとう。
って、ルー、よくもまぁ、ジル・ド・レなんて知っていたな。フランスの歴史まで勉強したなんて、すごいもんだ。まぁ、いろいろな本を片っぱから本郷の奥さんに注文してもらって、みんな召喚して王宮図書館にあるからね。読むつもりなら俺だって読めたんだ。
ああ、読むつもりならば……。悪かったな。俺はたくさん寝ないとダメな人なんだよ。
「そうですな。魔素を広く薄く集めようとしたら、その手しかない」
ヴューユさんもそう言ってくれて、俺もさらに続けた。
「そうなんです。人を殺さないと、それもたくさん殺さないと魔素は得られないとなったら、今の俺のいた世界では絶対に無理なんです。だから、魔素の技術でこの世界を超えることはできませんし、だからこそ科学技術が発展したのかもしれません」
そう、俺は俺なりに補足の一言を付け加えた。でないと、ルーの尻に敷かれているのが、王様たちにバレちゃう。それはそれで恥ずかしいからね。
「なるほど。科学技術の発展の裏にはそのような事情が……」
あ、王様、そこに食いつきます?
思いつきで言っただけで、本当にそういうことなのかは俺にはわからないんですけれど。なんせ、「乱神怪力を語らず」がいい事なんですからね、俺の世界は。
だって、科学者とか政治家が、そういう話をするのってほとんどアウトだったじゃん。UFOとか、マジで飛んでいるかもしれないのに。
ルーは、さらに付け加えた。
「ただ……。
必要性が薄いのに、『始元の大魔導師』様の世界を警戒してしまうのは、ナルタキ殿の世界を知らないことからの迷いです。私も見てきたことがあるとはいえ、理解しているとは言い難い。また、我が王の申されたとおりナルタキ殿の世界には恩義もある。
だからといって、希望的観測だけでこちらの世界の方針は決定できませんよね。
ことは魔素に関わること。もう一度、筆頭魔術師殿の考えをうかがっておかねばです。先ほどのお言葉といい、なにかお考えがあってのことか、と」
ルーのその問いに、ヴューユさんの眉間には皺が寄った。
どうやら本気で言うか言わぬか悩んだみたいだ。だけど、その時間は案外短かった。
「ならば、話しましょう。ナルタキ殿の世界の文書を送ってきた相手に、『貴世界の魔素技術を形にしたものを見せて欲しい』と返答ください」
えっ、形としたもの?
どういう意味かな?
そんなもん、俺の世界にはないぞ。もちろん、魔素の技術が皆無とは思わない。だって、それなりに確度の高いオカルトだってあるもんな。
だけど、ソレ、運べるものなのだろうか。たとえば封印された幽霊屋敷とか、将門の首塚とか、たたりとそれを封じ込めている呪法のセットなら、魔素の技術と言えるかもしれないけど。でも、どうにも運べるって感じじゃないよな。
第5話 詐欺師対策?
に続きます。




