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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第三章 電気工事士、がんばるぞ

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第3話 関わることのリスク


 きっと王様、前々から考えていたんだろうな。

 この5年ほどの間でも、ダーカスはまったく違う街になった。見渡す限りの畑とまだまだ背は低いけど緑の濃い森に覆われ、ネヒール川の流れは豊かで自然と人の手による両方の富を運んでくる。

 もちろん、ダーカスだけじゃない。すべての国がみな豊かになった。波濤を越えた他の大陸でも、人々の生活は10年前が信じられないほどの輝きに満ちている。

 ……てか、みんながそう感じてくれていたらいいんだけどな。


 王様は続けた。

「ブルスからの薄布、サフラの木工、エディの武器防具はそのままでは売れぬにしても、それを作る技術は他のものを作るのにも使えよう。それに金細工であればどこの国でも売ることができる。地金の価値より細工としての価値の方が高くなれば、ナルタキ殿の世界への影響も少なく抑えられるのではないか」

「時期尚早などとは言ってはおられぬという、思い切ったご英断ですな。だが、今は良いとして、先々ナルタキ殿の世界と関係がこじれる日が来たらどうなさるおつもりで?」

 大臣てば、心配性。俺はそう思ったんだけど、ルーは違ったらしい。


「国家間から男女の仲に至るまで、別れるときの方が容易ならざることになるものです。なんらかの保険は掛けておくべきではないかと、愚考いたします」

 って、男女ってなんだよ?

 ルーってば、そういう経験があったのかよ?


「ナルタキ殿の世界に魔素はない。交誼の打ち切りはこちらからのみ、自由にできることではありませんか?」

 筆頭魔術師のヴューユさんの問いに、首を横に振ったのはトプさんだった。


「一度関係を結び、魔素の技術を渡してしまったら、ナルタキ殿の世界がそれを習得するのに掛かる時間は、1つの季節が過ぎるよりも早いものでしょうな。

 おそらくは、筆頭魔術師殿もナルタキ殿から聞いているとは思うのですが……。

 ナルタキ殿の作った蝋管式蓄魔素機による魔法の自動化は、ナルタキ殿の世界のこんぴゅーたというものに同じことをさせた場合の万分の一のさらにまた万分の一ほどの効果しかないのだと。

 あれからナルタキ殿のお陰で、円形施設(キクラ)の管理は自動化され、魔素は魔術師の手を煩わせずとも潤沢に手に入るようになりました。だが、それまでを一瞬で成し遂げられてしまったら、我々はもう決して追いつけませぬ。

 ナルタキ殿の世界は『魔素はない』と言いながらも、薄く広く集める方法を開発するは必然と小官は考えます」

 ……たしかに俺はそんなこと言ったけど。


 でもさ、俺の世界、マジで魔素はないんだよなー。あったら、ハ△ドパワーとかがマジになっていたと思うし。薄く広く集める方法って言ったって、人間から絞るぐらいしか思いつかないし。

 って、ん!?


「基本的人権って話、前にしましたよね?」

「聞いておるもなにも、ダーカスはその線で施政をしてきたではないか」

 王様がそう答え、みんながさらに頷く。

「もしかしたらですけど……」

 俺は思いついたことを、そのまま口にする。


「基本的人権って考え方がなかったら、魔素は集められたのかもしれません。

 昔、金を作るためにたくさんの人を殺したという時代があったはずです。よくは憶えてませんが、長髪で槍と鎖で戦うジルド……、なんとかという人がいたはずで……」

「ジル・ド・レ、ですね」

 ルーが補足してくれて、さらに付け加えた。

「長髪で槍と鎖で戦うのは、ナルタキ殿の世界の創作に描かれた姿です」

 やめてくれ、そんなこと言うなよ。これは相当に恥ずかしいぞ。

第4話 筆頭魔術師殿の考え

に続きます。

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