第2話 王様のアイディア
「では、本郷殿の妻子を召喚したのち、こちらからの召喚、派遣を取りやめれば、こちらの世界は無事ということになるのか?」
「そうなりましょうな。
とはいえ、ナルタキ殿の世界に攻め入りし敵が、いつの日にかこちらに入ってこぬ保証はありませぬ。いや、いつの日か確実に入ってくるでしょうな」
王様の質問への武官のトプさんの言葉に、その場はしんとなった。このままだと、この世界がいつまで無事かはだれにもわからないと言っているようなものだからだ。
「だがな……。恩義は返さねばならぬ」
王様の言葉は短かったけれど、俺の心は申し訳なさでいっぱいになった。だって、金の売買で目をつけられていただなんて、知らなかったんだよ。で、俺が見逃されていたことに、王様が引け目を感じているとなったら、それはもう完全に俺のせいだ。
で、俺だって話を聞いて思い出したよ。
双海と菊池。
たしか双海は両親が事故で亡くなって、姉と二人暮らしだったはずだ。菊池は……、どんな奴だったっけ? いたのは憶えているけれど。
あの頃の俺は、同級生といっても人のことなんかよく見ていなかったんだ。
ともかく、その2人が今はそんな仕事についているだなんて、だから見逃してくれていただなんて、想像もできやしないよ。
でもそのお陰で金が売れて、向こうからいろいろと持ち込めたのは事実だ。子牛なんか、何頭連れてきたか、だ。でないと、血が濃くなりすぎちゃうからね。
今や、まだまだ値段は高いけど、ビーフステーキだって食べられるようになったんだ。
だから、そこはありがたいとしかいえないけれど……。
「我が王よ。お詫びの言葉もありません。
どのような咎めも受けます」
俺の言葉に、王様は首を横に振った。
「いいや、我が友よ、余が考えておかねばならぬことであった。
ナルタキ殿の世界の複雑さと、二重三重になされた危機管理は聞き及んでいたのだ。他から紛れ込んだ異物に気が付かぬはずがない。
それになにより、そのような危険性があろうとなかろうと、余の命令は変わらなかった。作物の種子、家畜、工具、書籍、どれもないでは済まされなかったのだ。
だがの、余は今回のこと、豊穣の女神によって与えられた好機と考えている」
「……好機とは?」
そう聞いたのは大臣だ。
王様の従兄弟だから、こういうときに他のみんなの代わりにがんがん質問してくれるんだ。でないと、みんな聞きにくいからね。察するってのは、けっこう誤解が生まれるしな。
「金という値を渡して、ナルタキ殿の世界からさまざまなものを入手してきた。だが、それは非公式なものだった。取りようによっては、こちらの世界がナルタキ殿の世界から盗んでいたと言われかねぬ行為でもあった。
だがの……、そろそろ、こちらも体力がついた。貿易を始めてもよいのではないか。となれば、軍事同盟も結んでおいた方が良かろうし、この際ゆえ、魔素の知識と引き換えに相当の保護貿易の協定も結べよう。さすれば、こちらの産業を守りながら、利益だけを得られるはずだ。
しかも、それは向こうの意に沿い、恩義を返すことにもなる。
まだまだ、こちらが簡単に飲み込まれてしまう程度の力しかないのはわかっているが、それを言っていたらいつまで経ってもこれ以上の発展は望めぬ」
御前会議に出ているみんなが、揃って息を呑んだのが俺にもわかった。
第3話 関わることのリスク
に続きます。
今日の題って、なんか、雑貨屋さんみたいww




