第1話 御前会議
「これは一体どういうことだ。どう判断すべきと思うか、ルイーザ?」
王様の甲高い声に、ルイーザ、今は俺の妻となったルーが、珍しく声も出せずに悩んでいる。
議題としては俺の世界のことなのに、その話の中身が魔素のこととなっては、『始元の大魔導師』である俺でも口は挟めない。
だって、『始元の大魔導師』と呼ばれていたって、俺は宴会芸で親指を外して見せる魔法、いや、手品ぐらいしかできないんだ。俺は電気工事士の技術でこの世界に迫る滅びと戦ったけど、自分自身は一度も魔法なんか使えてない。
本郷の奥さんから定期便での手紙が届いて、王宮はいきなりすったもんだの大騒ぎになっちまった。今は、円形施設と電線を使った通信網も世界中に張り巡らされているから、リゴスにいる本郷にもすぐに連絡が取れた。だけど、本郷も絶句していたんだよ。
だってさ、日本にいたときの本郷は、主任電気工事士で自分の会社を立ち上げていたし、俺はそこで働いていた第二種電気工事士だったんだ。で、日本から、公式の軍事同盟の締結についての書類が届いて、どう判断するかなんて聞かれて答えられるわっきゃ、ないだろっ!
この御前会議の場で、俺はすぐに手に負えないと白旗を揚げたし、リゴスにいる本郷も同じようなものだ。
だけど、いつの間にやら日本がとんでもないことになっているというのは理解した。で、理解したからなんだけど……。このまま帰って屋敷のベッドで毛布にくるまって寝たいよ。目が醒めたらすべての問題は片付いている。そんなのを夢想したけど……。
王様のケ□ロ軍曹みたいな高い声は続き、俺に話が振られてしまった。
「ナルタキ殿。
余は忘れてはおらぬ。その昔語っていたではないか。ナルタキ殿の世界とこの世界が戦争になったら、この世界に勝ち目はまったくないと。ナルタキ殿の世界は、ただ1人の兵士を失うこともなく、この世界を蹂躙し尽くす、と。たった1つでこの地上に太陽を作り、すべてを焼き尽くすことが可能な爆弾も万の単位である、と。
それでもどうにもならぬ事態なのか?」
……きっと話のレベルが違う。核爆弾でなんとかなる話じゃなくなっているんだよな、コレ。
「状況の説明を読む限り、そういうことかと思います。
ヴューユさんにお聞きしたい。円形施設による召喚、派遣ではなく、私と本郷が元いた世界に常時通れる通路を作れますか?」
「作れません。
それどころか、どうやったらそんなことが可能なのか、その方法すらまったく思いつきません」
あたぁ。マジかよ。
そこまで難しいことをされているのか……。
「リゴスの魔法学院の総力を上げたら、その通路を塞ぐことはできますか?」
「開けられぬものは閉められません。魔素技術においてその敵は絶対的な優位にあり、魔法学院とすら途方もない差があります。
魔法学院ではそういうことができるという前提での研究を始めていると思いますが、一朝一夕ではどうにもなりますまい」
ヴューユさんの答えはあまりにシンプルで、あまりに救いがなかった。
第2話 王様のアイディア
に続きます。




