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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり
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第24話 Give and Take?


 ヨシフミは話を続けた。

「そちらの謎を教えて下さい。どうやって僕たちのことを詳しく知ることができたのですか?

 それを教えてくれたら、そちらのある程度の立場の人員と会わせてください。僕はその人が嘘を言っているかがわかります。本当の話をしているとなったら、互いに得るものが大きいでしょう。信頼関係とかも、です」

「それでは取引きにならない。一方的にこちらがGiveしているだけではないか」

「いいえ、そんなGive and Takeは最初からありませんよ」

 そんなヨシフミの声に、スピーカーからの声は沈黙した。


 ヨシフミは話し続ける。

「今の問題は、あなたたちに非があるからだ。

 僕たちは強引にここに連れてこられた。だから警戒している。もっと穏健な方法だってあったはずです。

 そして、今もあなたたちは僕たちの身柄を押さえている。これは途方もないアドバンテージです。僕たちはなにも、喋らないとは言ってない。僕たちは、どこの組織とも敵対せず、しない組織で、『人類を死や病といった苦しみから永遠に解放する』ために存在している。だから、悪用されないのであれば話すことはやぶさかではない。

 わかるでしょう?

 医学は人を救うことにも殺すことにも使える。だから、誰に対しても無条件にオープンにしていいものではない。だから、医師法なんて法律まであるんです。外科手術が傷害と違うように、その区別は峻別されるものだ。だから、あなたたちがどういう存在かわからなければ、僕たちはどうしても話せない。それはもう、命がけで話せないんです。

 だから、この取引きで僕たちが話すかどうかにGive and Takeはそもそも成立しない。でも、それでも僕がこんなことを話すのは、あなたたちが非道の組織には思えないからだ。あなたたちはさまざまなことを知っている。僕たちの拉致もした。だけど、それをもって、すぐに強硬手段には出なかった。それは、僕たちからの協力を引き出せる余地があると思っているからじゃないですか。

 瑠奈だって、同じことを言ったはずです。そして、あなたたちが自分たちがこの取引きに乗れないような存在だと自覚していたら、僕と瑠奈を一緒にしてさらに情報を得ようとするより個別に拷問したはずだ。

 つまり、あなたたちには譲歩の用意がある」

 ヨシフミは長い言葉を、淀むことなく言い切った。

 瑠奈は顔には出さなかったが、ヨシフミの言葉にいつの間にという思いが濃い。ここまでの交渉をするとは思っても見なかったのだ。


 だが、それは虫の良い考えだったのかもしれない。

 スピーカーの音声が再び響くことはなく、2人は静けさの中に閉じ込められていた。

 こちらの譲れない線は出した。これで交渉が成立しないなら戦うしかない。だが、初めてのことではない。無傷で帰ることはできないかしれないが、相手に教訓を与えることはできるだろう。


 瑠奈とヨシフミは視線を合わせた。

 互いの考えはわかっている。ヨシフミのヴァンパイアの怪力を持ってすれば、ドアを壊すのは簡単だ。そのこぶし一つで、瑠奈の体当たりよりよほど強力な破城槌になるのだ。

「行く?」

「行こう」

 2人の意思疎通は、これだけで十分だった。


 だが、瑠奈は、2回目の肩透かしを食らうことになった。

第25話 謎の答え

に続きます。

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