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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

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第18話 失態


 ふと瑠奈は、あることに思い至って蒼白となった。

 今の瑠奈の考えが正しいとしたら……。

 瑠奈の中の警報灯は、最大輝度で光りだしていた。


 今さっき、ヨシフミは「見てこようか?」と言った。そう言ったはずだ。「コウモリになって、見てこようか?」とは言わなかったはずだ。言わなかったはずであってくれと祈りながら、瑠奈は走り出していた。


 登山道を駆け下りる瑠奈の後ろを、ヨシフミも慌てて追う。

「どうしたん?」

「頂上の神社に、盗聴マイクやカメラが仕掛けてあったら?」

 慌ててはいても息は切らしていない瑠奈の声に、後ろに続くヨシフミの気配が息を呑むのがわかった。そして同時に、これほど急いでいながらも、瑠奈がジェヴォーダンの獣の姿をとらないことにも思い至ったらしい。


 車まで無事にたどり着けるか?

 車で無事に走りだせるか?

 このまま、成田にたどり着き、明日の朝を迎え、第1便で国外に出られるか?

 いや、不本意でも一度は自宅に戻らねばならない。さすがに、秋田県に行くのにパスポートは持っては来なかった。

 こうなると、すべてが賭けだった。それも相当に分の悪い……。


 聞かれてまずい単語を、私たちは口にしなかったか?

 瑠奈は必死で思い返す。

 特にはないはずだ。ヨシフミも、「コウモリになって」とは言わなかった。だけど、生気(プネウマ)という単語は使ってしまった。「国家機関がそんな単語に反応するとは思えない」と、そう言い切れたのは、異世界への通路が口を開いたときまでだ。そのあとは、オカルトまで含めてすべての情報を精査し直したはずだ。その中で、生気(プネウマ)という単語に行きあったっていたとしたら……。そして、薔薇十字の秘儀と結びつけられていたら……。


 日本にも薔薇十字の準構成員はいる。

 薔薇十字の秘儀は医学と密接な関係にある。だから、ドイツ留学した医師のうち、特に優秀な者は薔薇十字の構成員と接触の機会があることが多いのだ。

 だから、この国の一部の人間が、薔薇十字という組織を知っていてもおかしくはない。こちらとしても、まったく無名よりはその方が影響力を持てると考えて、この状況を許容してきた。EU諸国からの圧力も、その方がやりやすかったのだ。


 だけど、薔薇十字の構成員と接触の機会を持った、日本人医師の誰かが情報提供していたら……。秘密を守る誓いはされていても、自白剤や洗脳までは想定していない。なぜなら、「人類を死や病といった苦しみから永遠に解放する」という組織の大目的が果たせなくなるからだ。つまり、人類から隔絶した組織にであっては意味がないのである。

 長年秘密を守り続けてきた薔薇十字という組織が、こんな東洋の端の国で一気に白日の下に晒されてしまうかもしれない。これは瑠奈にとって取り返しのつかない失態だった。今でも薔薇十字の始祖、C.R.C.の墓を守り続けている祖母に咬み殺されても文句の一つも言えないほどに。


 瑠奈は不安を押し隠して走り続ける。

 鳥居を駆け抜けた。周囲は暗くなりつつあり、人影はない。

 車が見えた。

 ヨシフミが瑠奈を追い越す。共に人間の姿であれば、ヨシフミの方が背が高い。ストライドも長く、当然のことだ。その結果、向こう側の運転席とこちら側の助手席のドアに同時に取り付いたヨシフミと瑠奈は、そのまま車に乗り込んでいた。


 盛大に安堵のため息をついて、ヨシフミがエンジンのスタートボタンを押す。

 反応はなかった。

 そして、そこで2人は初めて気がついた。この車、同一車種であってもヨシフミと瑠奈が乗ってきた車ではない。

 だが、気がついたときにはもう遅かった。

 瑠奈とヨシフミの全身を、爆発の衝撃が襲っていた。

第19話 対話

に続きます。

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