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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

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第16話 ……これはよくない


 車の中で、寝て行くと言った瑠奈は、その言葉に反してヨシフミに話しかけていた。

「ねぇ、異世界って征服してペイするものなのかな?」

 と。


 問われたヨシフミは、無言でインターチェンジのETCゲートを通り抜け、高速道虚に乗った。

 車は滑らかに加速し、時速100kmのところで速度計の針はぴたりと止まった。この状態で6時間。ヨシフミにとっては長い時間ではない。


 ヨシフミの返答は、それからだった。

「たぶん、生物資源はあまり使えない。持ち帰っても、自分のところの生態系を破壊する結果になりかねないし。

 真珠とか珊瑚とか竹や木とかの製品ならまだしも、生きた家畜みたいなものはね。あとは石油とか、岩石の地下資源、さらに言うなら水かなぁ」

「水は、なんで付け足しなの?

 ある意味、水って一番重要なものじゃない?」

「水は怖いよ。その中には無数の生物がいる。淡水でも海水でも、だ。いちいち煮沸なんてできないし、濾すなんてのも量が多くなると現実的じゃなくなる。だから、水だけ運ぶなんて絶対ムリだ。

 それに蒼貂熊(アオクズリ)、あんまり水をどうこうってイメージないんだよね。水欲しさに侵略してきたのなら、もっとこう、ダムのあたりをテリトリーとするとか、そういう行動があってもいいと思わない?」

「……確かに」

 瑠奈は答え、ヨシフミの言葉の正当さを認めた。


「わざわざ攻めてくるんだから、きっと向こうはなにか重要なものが不足しているんだろうな。それはまちがいない。で、それはここから運べるものだ」

 さらに続けるヨシフミに瑠奈は頷いたけど、そのなにか重要なものがなにかは想像もつかない。


生気(プネウマ)ってことはないもんね」

「ああ、絶対にない。こっちの生き物より蒼貂熊の方が持っているんだから」

 そこまで話し、沈黙が車内を支配した。


「そもそも、僕たちの考えが間違っているのかな」

 そうヨシフミの声が漏れたのは、1時間も経ってからだった。

「経済的な理由はないとか?」

「いいや、そういうことじゃない」

 瑠奈の問いをヨシフミは言下に否定した。


「それより、こっちから持って行くではなく、向こうから持ってくるってことはあるかもしれないよ。蒼貂熊は、そのための此方側の環境改変のために来ている……」

「……遊星爆弾か」

「さすがに長生きしている人は言うことが違う」

「今走っているのが高速道路でなかったら、殴ってたよ」

 瑠奈の声が低くなる。


 遊星爆弾は、宇宙戦艦ヤマ◯に出てきた兵器だ。

 冥王星軌道から地球に向けて、岩塊を落とす。その位置エネルギーだけで最悪ともいえる威力の兵器となるが、それだけでなく攻め手側の星の環境を作る目的をも果たしていた。

 蒼貂熊も、今のヨシフミの思いつきで言うなら、まったく同じ目的で来ていることになる。


 そして、たちが悪いのが遊星爆弾にせよ、蒼貂熊にせよ、それへの対処はやってもやっても意味がないということだ。なぜなら、それをこちらに送り込んでくる存在にとってはコストも安く、痛くも痒くもないからだ。一方的にこちらに被害と負担が生じているだけなのである。


「あえて言うなら、宇宙人と地球人との生活環境の違いより、蒼貂熊の世界と地球人の環境の方が違いが少なかった。だから、方法論がより温和になった。

 そんなことも言えるかもしれない」

「……これはよくない」

 ヨシフミの考察へ、間をおいての瑠奈はつぶやいた。

 されに、ヨシフミは無言で頷いた。

 車は今も北に向かって走り続けている。

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