表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

159/278

第15話 出発


 クロマンタに行って、謎の黒服たちの組織の注意を引く。もちろんこれは避けねばならないことではあるのだが、半世紀も日本に帰ってこないという判断をすればいいだけの話で、実は瑠奈に問題はない。

 だが……。

 そこまでの覚悟をすると、逆に見えてくるものもあった。


「ヨシフミ。アンタは両親が健在なんだよ。いいの?」

「いい。フランスでもドイツでも、呼べばいいだけ。あの2人は、地獄の底でだって生きていける人たちだから。フランスやドイツなら喜んで来るよ」

 ……そうだった。

 ヨシフミの親だけあって、そういう人たちだった。自らの魂と寿命で悪魔と取引を成立させるくらいには、ぶっ飛んでいる。


 そして、あの黒服たちが国につながる組織なのであれば、ヨシフミの両親を人質にとって、殺すだのなんだの言い出すとは思えなかった。また、もしもそんなことを言いだしたら、|クリスチャン・ローゼンクロイツ《C.R.C.》の組織をもって対抗することになる。EUの国々のすべてを、日本が敵に回すとは思えなかった。



「それにね、本気で逃げるとなったら、僕も瑠奈も絶対捕まらないよ。その一方で、程よく黒服のあいつらを刺激してやれば、得られる情報の方が多いかもよ」

 瑠奈が、ヨシフミに敵わないと感じるのはこういうときだ。社会経験の少なさから不必要にナーバスになるかと思えば、いきなりのこの図太さである。


 これはただ単に、ヨシフミがヴァンパイアの力と国家というものの力のバランスを見極められていないからこそ起きる事態である。彼我の力の評価が、過小だったり過大だったりしているのだ。これが適切なものになったとき、国家というものですらヨシフミには手も足も出ないことになるだろう。

 そんな未来が透けて見えるからこそ、その本質が巨大な狼に過ぎない瑠奈はヨシフミには敵わないと感じるのだ。


「わかった。じゃあ、クロマンタまで出かけよう。ヨシフミの荷物を車に載せて」

「瑠奈は着替えとか、持っていかないの?」

「要らない。私はお財布と携帯以外、なにも持たずに行く」

「また裸になっちゃうよ」

「意味がないんだよ。

 なにも起きない強行軍なら、日帰りだって無理じゃない。だけど、なにか起きたら私の服はぼろぼろだ」

「だからこそ、必要なんじゃない?」

「相手の攻撃が一回だけだったらね」

 これにはヨシフミも反論できない。


 車に積んだ荷物が無事である保証はどこにもない。常に一人が車に残るなどという、めんどくさいこともできないだろう。となると、瑠奈の判断が正しくなる。戦いの回数の分だけ服は必要となるからだ。

 そうなら、服は行った先で入手すると決めておいた方が後腐れがないのは事実だった。


「じゃ、出発しよう。僕が運転するよ」

 ヨシフミの声に、瑠奈は頷く。

 600km、往復で1200kmを超えるまでの長距離ドライブとなると、疲れという概念自体がないヴァンパイアのヨシフミが運転した方がいい。

 車ではなく、新幹線で行くという選択肢もありはしたが、現実的ではない。タクシーで行って謎を突き止めようとするなど、小回りが利かなさ過ぎるし、運転手を巻き込むことなどできはしない。

 そもそもが、「行く」のが目的ではないのだ。行って謎を解き、情報を得るのが目的である。疲れ果てて考えられないというのでは意味がないし、行った先での行動の自由の確保は絶対に必要だった。


 おそらく、給油も数回に及ぶだろう。

「瑠奈は寝ていって」

 瑠奈は、その申し出もありがたく受けることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ