表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

157/278

第13話 社会人経験


 それから待つほどもなく、瑠奈は戻ってきた。

 ヨシフミが先ほどのパトカーが大挙して山道を上って行った件について、必死に語るのを瑠奈は聞き流した。車の助手席に座ったヨシフミがさらに興奮して言い募るのに、瑠奈はぴしゃりと言った。

「うるさい!」

 と。


「だって、僕たちが蒼貂熊(アオクズリ)を倒したことが……」

「だから、うるさい!」

「僕たちの存在がバレちゃったら、この国で生きていけなくな……」

「もう一度言う。うるさい!」

「……なんなんだよ」

 不満と不平がたっぷりのヨシフミに、瑠奈はため息をついた。


「この国はね、法治国家なの。そのことの意味もわかんないの?」

「そのくらい、わかるよっ。

 鳥獣保護法だっけ?

 それに、道路損壊の罪だって……」

「つくづくバカね、ヨシフミ。こんなこと、説明させないでよ。

 アンタ、一回はきちんとどこかに就職して、社会人として他人の釜の飯を食った方がいいわ。世の中の仕組みを知らなさ過ぎる」

「僕、ヴァンパイアだから、飯は食っても意味ないんだけど」

「日本人のくせに、そんな例えも知らないのっ?」

「フランスの人のくせに、日本に来て150年のおばあちゃんに言われたくな……」

 びたん。


 運転しながらの瑠奈の左手でのひっぱたきだったが、ヨシフミの身体はシートにめり込み、リクライニングアジャスタ(背もたれの角度調整の部品)だけでなくシートレールまでが悲鳴のような金属音をあげた。


「……なんでだよ」

 人間だったら身体が破裂するほどの打撃だったのだが、ヴァンパイアにはさほどの痛みすら与えられていないようだ。でも、その口調は不満たらたらだ。

「うるさい、馬鹿」

 むしろ、その追い打ちの方がヨシフミには効いた。

「……なんでだよ」

 俯いて、芸もなく同じ言葉を繰り返すヨシフミに、瑠奈はため息を吐して説明をした。


「ヨシフミ、覚えておいて。

 犯罪には、『行為』と『行為の主体』、それから『行為の客体』が必要となるの。

 AがBを殺した。そしたらAが『行為の主体』、Bが『行為の客体』、そして殺すことが『行為』となる。今回の件にあてはめたらどうなると思う?」

「僕たちが『行為の主体』、蒼貂熊が『行為の客体』、『行為』は殺したこと」

「だから、なんで私たちが『行為の主体』なのよ?」

「僕たちが殺したからだろ?」

「どうやって?」

「噛みついたり、投げ飛ばしたりして」

「だから、どうやって?」

「えっ?」

「裁判の場で、どう説明するの? 被告人、内山瑠奈の罪状を言ってみなよ」

 そこでヨシフミは理解した。

 自分にせよ、瑠奈にせよ、被告席に座らせることは不可能だと。


「呪われて殺されたとかで呪った人を殺人罪で逮捕できないでしょ。科学的に相関が立証できないと、法は適用されないの。だから呪いなんか『行為の主体』に絶対ならないの。

 で、私とヨシフミのことを知らない警察が、どうやって私たちと結びつけるの?」

「それはわかったよ。でもさ、現に2頭の蒼貂熊の死体が……」

「その2頭が喧嘩して、共倒れになったんでしょ」

「ああっ!」

 ヨシフミはぽんと手を叩いた。

 言われてみれば、警察はそのストーリーで事件を解決するしか手がないのだ。


「むしろね、警察は逃げたら追ってくる。

 だから逃げずに聞かれたら『知らない』と答えるだけ。そこにいて答えることが大切なの。それがこの場合の最適解で世の中の仕組み。なんでそんなこともわからないかなぁ」

「今ならわかる」

「だから、遅いって。偉そうに答えるな」

 瑠奈にけちょんけちょんに言われたヨシフミは、なぜかとても嬉しそうだった。

第14話 東北行

に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ