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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

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第12話 バレた?


 結局、瑠奈はショッピングモールに乗り付け、まともに試着もしない乱暴な買い方で一通りの服を揃え、ワインの売り込みの商談に駆け出していった。

 ヨシフミはヨシフミで、そのままショッピングモールに残され、手持ち無沙汰にうろうろと彷徨(さまよ)っていた。


 最初にコウモリになったときは、素っ裸で帰ってきたものだ。それから段々と経験を積み、自らの能力を出し抜く形で瑠奈の服と自分の服くらいなら運ぶことができる。だけど、財布までは重くて無理だったのだ。残念ながら、こと飛ぶということに関しては、鳥の翼に比べてコウモリの翼はあまりに情けない。

 自分の身体を霧にするときであればもっとたくさんのものが運べるが、なんにしても霧、風まかせでなければ目的地にたどり着けない。

 そうなると、またコウモリの姿で自力で飛んで帰るか、瑠奈の車に同乗するしかない。


 ヴァンパイアであるヨシフミの身体は疲れなど訴えないが、ヨシフミだって自分の都合があった。それをすべて放りだして、瑠奈の服を運んだのだ。帰りくらい同乗させてもらって、のんびり帰ってもいいじゃないか。そうヨシフミが思い、瑠奈に話したのもまた自然なことだった。


 だが、そう思ったことをヨシフミは後悔している。

 一文無しでショッピングモールをうろつくのもそれはそれで辛いものだし、とはいえお金があってレストランやカフェに入っても人間の食べ物が美味しく感じるわけでもない。

 この広大なショッピングモールの空間の中で、ヨシフミの居場所だけがない。

 つくづく、経済的消費活動というのは、人類の人類による人類のためのものなのだ。


 で、財布がないくらいだから携帯もない。

 携帯がないから、瑠奈に伝言を残して、コウモリの姿で先に帰ることもできない。

 しかたなく待ち合わせ場所にした出入り口近くの背もたれもない椅子に座って、ひたすらに時間が経つのを待つ。


 ヨシフミは、ふと気がついた。

 無限の寿命を持っているにも関わらず、「無駄な時間を過ごしている」と感じている自分に。

 無限の中では、有意義も無意義もありはしないのだ。さすがに、未だに人間の感覚を引きずっている自分が可笑しくてしかたがない


 そんなヨシフミの耳を不快に刺激する音があった。

 笑みが顔に出ないように注意しながら外を窺うと、大量のパトカーがサイレンを鳴らしながら走り去っていく。

 もしかしたら、ヨシフミと瑠奈のやったことがバレたのかもしれない。パトカーが向かっている方向は一致している。一応、蒼貂熊の死体は林の中に放り込んだし、瑠奈の服の残骸もできるだけは回収してはきたのだが、長く隠し通せるとは思ってはいなかった。


 なぜなら、あの悪甘い獣臭が道路に色濃く漂い残っていたからだ。これは消しようがなかった。

 季節柄、窓を開けて走っている車もいただろうし、暗くなってすぐぐらいなら峠を攻めるサイクリストだっていたかもしれない。

 おまけに道路の真ん中が派手に陥没していれば、それだけで通報対象になるだろう。といって、どこに通報していいかはわからないから、とりあえず警察ってのはありそうなことだ。

 だが、それにしても早すぎる。せめて、瑠奈の車で県境を越えておきたかった。でないと、他の県警との情報共有の手続きが不要になって、さらに手早く追跡されてしまう。


 さすがに山中にライブカメラはないだろうし、瑠奈の車が犯人だと直結する証拠もないだろうけど、事情聴取くらいはされるだろう。そこを走った車は、登り口、降り口の交差点のカメラで特定できるはずだからだ。


 問題は、瑠奈の車の前を走った車だった。

 それがもしかしてパトカーだったりした場合、道路を陥没させ、蒼貂熊を殺した存在としてピンポイントで特定されてしまう。それまでは、「道の陥没はなかった」という有力な証言が得られてしまうからだ。

 こうなると、ほとぼりが冷めるまでドイツかフランスに逃げていた方がいいかもしれない。

 合流後に瑠奈が同意したら、そのまま秋田県に行き、クロマンタを調べて、そしてすぐに成田で出国がいい。

 フットワークの軽さは、オカルトの暗がりに生きる者にとって絶対に必要なものだとヨシフミは思っている。勇者がやってくるのをじっくり待っているから、魔王は退治されてしまうのだ、と。

第13話 社会人経験

に続きます。

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