↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

154/278

第10話 蒼貂熊の免疫


 だが……。

 決めてかかるのは危険ではあるが、ヨシフミの考えでは蒼貂熊の身体は自ら少量の生気(プネウマ)を生産するとともに、他のものを喰って奪って溜め込むタイプとしか思えない。なぜなら、やたらと貪り食う反面、瑠奈とヨシフミのように爆発的な生気(プネウマ)の利用ができていないからだ。

 蒼貂熊(アオクズリ)の怪力は、あくまで物理で説明の付く範囲なのである。

 ヨシフミのように、トン単位のものを100mも投げ上げることなどできはしない。


 ただ、問題はそこからである。蒼貂熊の生気(プネウマ)に対する特性は、誰が「設定」したのかということだ。

 こちらの世界では、生気(プネウマ)を物質化して小さなナイフ1本を作るのに6万人の人命が必要だった。それほどこちらでは生気(プネウマ)が希少なのだ。

 だが、蒼貂熊ならば3000頭もいれば同じものが作れるだろう。

 こうなると、蒼貂熊がいた世界には、ある程度の生気(プネウマ)があったとしか思えない。あったからこそ、生気(プネウマ)を濃く持てる身体なのだ。


 そして、たとえそうであっても自分の世界にとどまっているのであれば、通常の生物の進化の範囲内の免疫でことは足りる。

 つまり、この特性は、異世界に派遣される前提で付与されているのだ。


 なお、自分の世界にとどまっていても、生気(プネウマ)による完璧な免疫系があるにこしたことはないのではないか、という指摘もあるかもしれない。

 だが、どこの世界であろうと、生きている間は毎日鍛え上げられている免疫系に、生気(プネウマ)が入り込む余地はない。

 逆に生気(プネウマ)の力が入り込めば、免疫系はあっという間にその力を失う。その方が、生物としては失うものが大きすぎる。なぜなら、そうなってから生気(プネウマ)を失ったら、絶滅以外の道が残されていないからだ。


 蒼貂熊はそんなリスクを伴う免疫系への生気(プネウマ)の利用が可能で、さらには生体としての強度も相当なものだ。なのに、爆発的な生気(プネウマ)の利用ができないということは、蒼貂熊が人造生命体であることの証拠であろう。蒼貂熊の造物主は、異世界間の生気(プネウマ)の任意な持ち込みを規制しているか、まったくできないようにしているのだ。

 これは、あまりに恣意的な「設定」ということだ。

 

 それに……。

 不死に近いヨシフミも瑠奈も、死ぬことの意味を理解している。

 生物は死なねばならぬのだ。

 生気(プネウマ)によって、若返る細胞と老化細胞すら許さぬ完璧な免疫系を持ち、その結果として不死すら得たとして、それは決してその種の勝利を意味しない。


 なぜならヨシフミも瑠奈も死なないからこそ、なんの変化も得られない。あまりに強い究極の生命体であるがゆえに、進化の余地がない。

 瑠奈の2000年の寿命ならまだしも、ヨシフミの一万年を超える寿命となると、それが無視できないほどの結果を呼び込む。


 一万年未来に人類は滅びているかもしれないが、より進化をしている可能性もある。その生命のサバイバル・ゲームから、ヨシフミは完全に弾き出されているのだ。

 そして、不死で怪力という特性すら、長い時間の中では新たな種のなんらかの方法で超えられてしまう。

 走り続けていなければ、そこにいられない。赤の女王は、常にすべての生物に過酷なレースを強いている。不死を手に入れたヨシフミは、同時に不戦敗をも手に入れたのだ。

第11話 クロマンタ

に続きます。

次話から話が動きだします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。