第7話 ヨシフミ、その1
真祖のヴァンパイア。
それは、誰からも血を吸われずして、自らの意思で自らをヴァンパイアに変えた者である。おそらく最初の1人目は、分母が天文学的数字の偶然から生まれたものだったのだろうが、その存在の永続性から、人類から忘れ去られることはなかった。
そういった存在へ憧れというのも無視はできない。その能力はどこまでも高く、その気になれば、世界征服をも簡単にできるほどだ。なので、真祖のヴァンパイアはいつの世にも生まれてきていたのだ。
中学生の頃のヨシフミは、中1のころ、すでに中二病だった。
ネットが地球のすみずみまで広がった今の時代は恐ろしい。ヨシフミは自分の時間のすべてをネットの情報あさりに費やし、さらにはネットでの薬物の裏取引にまで手を伸ばし、購入したさまざまな薬品をも自分の体で効果を確認し、ついに自力で生気の秘儀にたどり着いたのだ。
だが、これはあまりに運に頼った方法だと言わざるをえない。ヴァンパイアになるために使用された大昔からあるさまざまな薬品群の中には、当然のように毒物も含まれていた。新手の麻薬のようなものは考慮しなくてもいいだろうが、あまり真っ当な薬剤とは言えないものも多い。体内に入れる順番や量を誤っていたら、ヨシフミはここでこうしてはいられなかったはずだ。
ヨシフミと瑠奈の出会いはほぼ偶然だが、そうとばかりは言いきれない。ヴァンパイアになれたという最初から、あまりにも幸運に恵まれているからだ。
運命はきっと、この2人になにかを用意しているのだ。
「蒼貂熊、どこから来たんだと思う?」
「どっちの意味で聞いてる?」
ヨシフミの問いに、瑠奈は問いで答えた。
「んっと、1つ目は僕が答えられる。だから、聞くまでもないんだけどね。
蒼貂熊ってのは、ペアってか、バディっていうか、2頭で動くらしい。で、瑠奈に片方があっさりやられちゃったので、そのまま隠れていたんだよ。
瑠奈に投げ飛ばされたとき、上から藪の中に身を潜めているのが見えたんだ。んで、じーっと瑠奈を観察していたから、戻ってきて尻尾を持って投げ上げた」
……さすがはヴァンパイアの怪力だ。トン単位のものを何十メートルも投げ上げるなんて、瑠奈にはとてもできないことだ。
他の蒼貂熊と会話して、瑠奈の情報を伝達するリスクを潰したということなのだろう。
ためらいなく蒼貂熊の口を封じるあたり、ヨシフミは昔のように甘くはない。まぁ、瑠奈が絡むと甘々になってしまいもするのだが。
ヴァンパイアはコウモリに変身する、身体を霧にする、怪力を持つ、赤い目で他人を誘惑できる、不老不死などの特長を持つ。しかも、ヨシフミは真祖のヴァンパイアだ。それらの能力のひとつひとつが極めて高いうえ、他の存在をヴァンパイアにすることもできる。
ただし、その代償として日光に弱い、川を渡れないなどの弱点もあった。よく知られた弱点としては、心臓に杭を打たれると死ぬというのがあるが、ヨシフミ自身はそれを弱点に数えるのは違うと思っている。だって、心臓に杭を打たれて生きている生き物などいないのだから、今さらなにを言っているのか、ということだ。
煮込んだら死んだからとか、燃やしたら死んだとか、火口に落としたから死んだとか、だから人類は熱に弱いという弱点を持っていると言うのは間違っているのではないか。
つまり、そういうことだ。
第8話 ヨシフミ、その2
に続きます。




