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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第140話 閑話休題 雅依と珠花2ー1

時系列は戦いが終わって、再び学校に集まり、並榎と宮原、北本の3人が集まったときのお話です。


 戦いは終わった。

 並榎はもちろんのこと、雅依と珠花も生き延びることができた。

 だが、もちろん無傷で、ではない。雅依と珠花は運良く無傷で済んだが、並榎は骨折に大量出血、低体温症、さらに酷い全身打撲で生命を失う一歩手前まで行ったのだ。

 それでも、井野の提案でみんなで学校に戻り、今回の蒼貂熊襲撃がそれぞれのトラウマにならないようにメンタルケアしあうこともできた。


 こうなれば、雅依と珠花は決着をつけるときがきたということになる。並榎はきっと雅依を選ぶ。並榎にその決断をさせないようにしてきた珠花だが、もうそういう手は効かない。覚悟を決めるときが来てしまったのだ。


 今は教室で3人きりだ。

 並榎の顔が赤い。耳など、教室に差し込む陽の光を通して真っ赤に見える。

 並榎もどきどきして、でも覚悟を決めてはいるのだろう。

 珠花も覚悟を決める。もちろん、選ばれない覚悟を、だ。


「……なんか、なんだろ、恥ずかしいな」

 並榎が言う。

「……吊り橋効果ってだけかもしれないよ」

 その言葉に雅依はそう返す。

 そこはもう、珠花には入り込めない2人だけの世界だった。


 珠花は奥歯を噛み締め、教室から出るために歩き出そうとした。さすがに、「私も吊り橋効果があるんですけど」とは言えない。

 「……あの」と並榎の声がした。

 だが、珠花は並榎の言葉を聞く必要はないと判断していた。もういい。帰ろう。その方がみじめにならなくて済む。


 運がなかったのだ。だけど、今ならまだ傷は深くない。久しぶりに、なにか大作を作ろう。料理でもいいし、手芸でもいい。そこに熱中して、あとは忘れてしまえばいい。珠花は今の非情な現実よりも、そんな考えにしがみついていた。


 珠花は心に決める。

 悔しいから泣き顔なんか見せない。笑って手を振って教室から出ていけばいい。簡単なことだ。

 ぼやけた視界で、遠いんだか近いんだかわからなくなってしまっている教室の戸に向けて歩こうとしたとき、その戸は向こう側から開いた。そして、黒いスーツの男たちが5人も入ってきた。


 珠花は、まったく動けなくなった。あまりに怖かったのだ。

 並榎が雅依と珠花を自分の背中に庇い、黒いスーツの男たちの前に立つ。

 雅依から見ても珠花から見ても、無謀としか思えなかった。立ち向かうには無謀としか言いようがないほど、あまりに体格が違う。

 高校生としたら、並榎は体格がいい方だ。ラグビー部の五十部には敵わなくても、大抵の男子よりは力強い。なのに、その並榎が子どもにしか見えないのだ。

 しかも、今の並榎の身体は満身創痍だ。戦える状態でないのは雅依も珠花もわかっている。


「君が並榎君か?」

 その質問に並榎は答えられない。きっと男たちが身にまとった雰囲気に飲まれているのだと珠花は思う。

「君が並榎君かと聞いている」

「……はい」

 繰り返し問われて、ようやく並榎が返事をした。


 珠花は並榎の背中に隠れているのをいいことに、スマホを取り出した。助けを呼ぼうとしたのだ。

 雅依は珠花のその姿を見ると、一歩前に出た。

 男たちの死角を増やし、珠花がスマホを扱いやすくするためだ。このあたりの呼吸、雅依と珠花、本人たちにとっては不本意にも完璧なのである。


「あなたたちはなんなんですか?

 なんで学校に入り込んできたんですか?

 不審者として通報しますよっ!」

 雅依の声が響く。


 珠花はスマホのディスプレイを必死で撫で回している。だが、どういじってもスマホはいつもの反応を返さなかった。

 電話はおろか、メールもL1NEも使えない。焦れば焦るほどスマホはいつもと違う動きをするようで、焦りのあまり珠花の指先はぷるぷると震えだしていた。

第141話 閑話休題 雅依と珠花2ー2

に続きます。

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