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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第126話 シャッター攻防戦


 坂本が蒼貂熊(アオクズリ)の背中の弱点を狙っているのは、想像とか推理の言葉も不必要なほどの確定事項だった。

 もう、ろくな武器がない。いや、最初からなかった。僕たちは、社会から完全に武装解除されているんだ。宮原は矢を射尽くしているし、僕も残り1本しかない。通用しない槍ももう残りは2本だけ。でも、それでも坂本のために、蒼貂熊の動きを止めなければならない。

 僕は(せわ)しなく視線を走らせ、北本が持っているガラスの瓶に目が吸い寄せられた。


 僕がガラスの瓶を掴むと、北本は瓶を下げていた紐を肩から外した。丸いガラス瓶がきれいにしっかりと縛られている。こういうところにも、北本の性格が出ているのを感じた。これなら少しぐらい無理しても、瓶から紐は外れなさそうだ。


「吹上、ハンマー投げだ」

 そう言って瓶を渡すと、吹上は僕の言ってないことまですべてを察してくれた。持っていた槍を地面に放り出すと、瓶を地面に置き、それに結んである紐を握る。周りにいる奥や佐野が吹上から離れて、吹上が瓶をぶん回す空間を確保する。

 そのまま吹上、心を落ち着かせるためか一呼吸。そして、一気に投げる体勢に入った。


 蒼貂熊に石鹸水入りのガラス瓶をぶつけたからって、それが致命傷になることなんかありえない。僕に成算があるわけじゃなかった。だけど、もうどんな手でも現状に変化を与えられるなら賭けるしかなかった。だって、もう僕たちに戦う手段はないんだから。

 くるくると回って、吹上は両手を離す。瓶は放物線を感じさせないほどまっすぐに飛んで……。蒼貂熊の頭の上のシャッターに当たった。


 がちゃんという大きな音とともに、ガラスの破片が飛び散る。

 ……外れじゃないか。

 見守っていた全員が失望していたと思う。石鹸水の飛沫がいくらか掛かったけど、蒼貂熊にはなんの影響もない。

 だけど、頭のすぐ上で大きな音とともにガラスの破片が降ってきた蒼貂熊は、反射的に頭を引っ込めていた。きっと、明るい照明にガラスの破片がきらきらと輝いて、それが目の前に降ってきたことに蒼貂熊は警戒したんだと思う。

 蒼貂熊の頭で支えられていたシャッターが、一気に閉まる。


「坂本! 逃げろ!」

「坂本っ!」

 悲鳴のような声が沸き起こる。

 蒼貂熊と一緒に閉じ込められてしまったら、槍1本持っていたって生き延びる(すべ)なんかない。それを知っているみんなからの悲鳴だ。蒼貂熊の背中からその隙を窺っている坂本に、危機に気がついて欲しいという意味もあっての声だ。


 だけど、この心配は杞憂だったようだ。

 さすがは坂本。ハリウッド映画みたいに、閉まるシャッターの下から転がり出てきたんだ。危機一髪にもほどがある。

 やったぞ。蒼貂熊を閉じ込めた。行田、岡部、細野のトラップ、素晴らしすぎる。これで、僕たちは安全だ。家に帰れるんだ。


 そう思って、天に突き上げようとしたこぶしは途中で止まった。

 シャッター下からアナコンダのように滑り出てきた蒼貂熊の前腕が、プラットフォームから落ちる坂本の足に巻き付いたんだ。

 逆さ吊りにされた坂本は、頭を打つのを両腕で辛うじてブロックした。だけど、このままだと、坂本は振り回されて殺されてしまうのは間違いなかった。

第127話 決着

に続きます。

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